研究課題/領域番号 |
20K08760
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
武山 雅博 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (30572010)
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研究分担者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50326328)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 第VIII因子 / 活性化プロテインC |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、FVIIIを中心とした凝固・抗凝固機能のさらなる解明と、抗凝固機能を受けにくい変異FVIIIを作成することにより、安定型・長時間作用型 FVIII製剤へ応用することである。我々が目指す新規FVIII製剤は、活性化プロテインC(APC)/プロテインS(PS)の結合部位を変異させた全く新たな機序による製剤である。新規FVIII製剤はAPC/PSと の結合能が弱く、APC/PSにより不活化されにくいため、従来のFVIII製剤より安定性が高く、長時間作用すると考えられる。これまでに、FVIII上のAPC結合部位 の詳細な同定を行い、APCがFVIII軽鎖(A3ドメイン)アミノ酸残基2007-2016に結合することを示した。これらの研究をもとに、当該年ではFVIII重鎖(A2ドメイ ン)上の新規APC結合部位の同定について研究を行った。まず、不活化(DEGR-)APCとFVIII A2ドメインの結合をBiacoreにより確認し、そのKdはおよそ40nMであっ た。これまでの検討で、FVIII A2ドメイン上のAPC結合部位はアミノ酸残基400-429内にあることが想定されているため、アミノ酸残基400-409, 409-419, 420- 429の合成ペプチドを作成した。プラスモン共鳴法により、DEGR-APCと各ペプチドが結合するかを検討した。その結果、ペプチド420-429のみがDEGR-APCと結合 し、同領域がAPCの結合部位であることが示唆された。FVIIIはAPCにより開裂を受け、不活化されるが、その不活化が本ペプチドの存在により阻害されるかを検 討した。本ペプチド存在下ではFVIIIのAPCによる不活化は、本ペプチド非存在下と比べて低下しており、本ペプチドがAPCの作用を阻害することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの研究で、FVIII A2ドメインのアミノ酸残基420-429にAPCの新規結合部位がある可能性が示された。本年度の研究では、APCと420-429ペプチドが、EDCクロスリンカーにより結合するかをWestern blottingを用いて検討を行い、APCと420-429が直接結合することが明らかになった。さらに、western blottingによりAPCと420-429ペプチドをEDCクロスリンカーさせたbandを、アミノ酸シークエンスすることを試みたが、得られたバンドが非常に薄く、アミノ酸シーケンスを断念した。この実験条件の検討に長期間要した。さらに、FVIIIのAPCによる開裂を各アミノ酸残基400-409, 409-419, 420- 429の合成ペプチドが阻害するかをwestern blottingで検討したが、明らかな差を認めなかった。本実験についても条件検討等に長期間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
APCと420-429ペプチドが、EDCクロスリンカーにより結合するかをWestern blottingを用いて検討を行い、APCと420-429が直接結合することがわかったが、アミノ酸シーケンスを行う事ができず、FVIIIのアミノ酸残基420-429のどのアミノ酸がAPCと結合するのかを同定することができなかった。これまでの研究で、FVIIIと他の凝固因子・抗凝固因子はFVIII上の塩基性あるいは酸性アミノ酸と結合することが多いとわかっている。従って、現在、アミノ酸残基420-429のうち、塩基性アミノ酸であるR421, K422, K424, K425, R427をアラニンに変異させた変異FVIIIの作成を行っている。変異FVIIIが作成でき次第解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験の進捗が予定より遅れており、予定より物品購入費が少なかった。次年度の助成金と合算し物品費として使用予定である。
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