研究課題/領域番号 |
20K08761
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
菊池 次郎 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60371035)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / 髄外増幅 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫は、現在も約40%が6年以内に死亡する難治性の造血器腫瘍であり、さらなる治療成績の向上が望まれている。治療には抗がん剤と骨髄移植が施されるが、完全奏効に至ることはまれで、数年後には再燃し治療抵抗性を獲得する。特に、骨髄腫細胞が肝臓などに転移、細胞塊を形成しながら増幅する髄外増幅が発症すると、さらに予後が悪化する。しかしながら、その発症機序は未解明である。 私たちは、骨髄腫細胞株を骨髄ストローマ細胞と共培養、ここへ振盪によるシェアストレスを加えた結果、骨髄腫細胞同士が凝集した細胞塊の形成を見いだした。細胞塊形成のメカニズムを解析の結果、ストローマ細胞の産生するヒアルロン酸が骨髄腫細胞に発現するCD44に結合、ヒアルロン酸を介して細胞同士が凝集し細胞塊を形成する機序が明らかになった。ここで、髄外増幅を発症した患者血清中のヒアルロン酸濃度を解析の結果、髄外増幅を発症していない患者よりも高濃度であることがわかった。また、全症例でCD44の発現が検出された。続いて、骨髄腫細胞株を移植したマウス骨髄腫モデルにヒアルロン酸を投与すると、ほとんどのマウスに髄外増幅の発症が確認されるとともに、生存期間が有意に短くなるなど、骨髄腫患者で見られる病態がよく反映されていた。 以上の結果から、血中ヒアルロン酸濃度が高値の患者において、CD44発現陽性の骨髄腫細胞が骨髄外に流出すると、血流によるシェアストレスによって細胞塊が形成、肝臓や軟部組織に生着して増殖するという髄外増幅発症機序を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度内に設定の目標をほぼ達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度内は、ヒアルロン酸の作用により骨髄腫細胞同士が凝集して形成した細胞塊の抗がん剤感受性を比較する。抗がん剤耐性能が見られれば、RNAシークエンスやマイクロアレイ、キナーゼアレイ解析により遺伝子発現変化とシグナル伝達機序をスクリーニング、耐性獲得の責任分子を同定する。最終年度である令和4年度には、薬剤耐性克服に有効な治療薬を探索し、その効果を髄外増幅を形成するマウスモデルにより検証を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス蔓延に伴う研究室の閉鎖等により軽微な遅れが発生したため。抗体など試薬類の購入に使用の予定。
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備考 |
自治医科大学幹細胞制御研究部ホームページ http://www.jichi.ac.jp/laboratory/molecula/stem/index.html
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