研究課題
多発性骨髄腫の予後不良の原因となる髄外病変形成と薬剤耐性の分子機構解明と克服薬開発をめざし、下記の研究を展開した。我々は骨髄腫細胞におけるcadherin群の発現を見出しているが、その臨床的意義を明らかにするために、患者検体を用いて病理組織学的検討を行った。その結果、E-cadherin陰性症例は、有意に髄外病変を形成する頻度が高く、また一部の症例において髄外病変ではE-cadherin陰性細胞が選択的に増殖していることも見出した。次に、同一患者の骨髄および髄外病変(胸水)より樹立した骨髄腫細胞ペア2種を用いて、髄外病変で高発現する遺伝子についてトランスクリプトーム解析を行った。その結果、髄外病変で発現が上昇し、かつデータベース解析で予後不良に関連する遺伝子として、RGS-1とSDC4遺伝子を見出した。RGS-1はGタンパク質シグナル伝達調節因子の一つであり、SDC4はヘパラン硫酸プロテオグリカンの一種であり、細胞内増殖シグナル伝達を増強することによって髄外病変形成に関わることが推測された。一方、創薬研究では、天然物komaroviquinonの誘導体群から、腫瘍増殖抑制作用が強く、かつ正常の骨髄細胞には毒性が低い最適化化合物としてGTN057を見出した。我々は偶然、GTN057がHGFR/c-METのチロシンキナーゼ活性を抑制することを見出した。GTN057は、EGFやFGF受容体シグナル伝達には影響を及ぼさず、yXXXyy motif を有するキナーゼ群を選択的に阻害すると考えられた。さらに、GTN057腹腔内単回注射後のマウス体内の薬物動態を検索した。LC/MS/MS解析により代謝産物の検出を試み、そのうちGTN054は強い腫瘍増殖抑制効果を示すことも判明した。すなわち、GTN057は直接作用のみならずprodrugとしても抗腫瘍効果を発揮することが推測された。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Cancer Medicine
巻: - ページ: -
10.1002/cam4.5691
Colloids Surf B Biointerfaces
巻: 220 ページ: 112928
10.1016/j.colsurfb.2022.112928
F1000 Research
10.12688/ f1000research.109551.1
International Journal of Hematology
巻: 115 ページ: 605-608
10.1007/s12185-022-03297-w
Blood advance
巻: 6(8) ページ: 2480-2495
10.1182/bloodadvances.2021005772