研究実績の概要 |
原発性骨髄線維症は骨髄線維化と髄外造血を特徴とする造血器悪性腫瘍である。本研究ではトロンボポエチン受容体作動薬であるロミプロスチム(Rom)を高用量で投与することで可逆的な骨髄線維化を誘導するマウスモデル(Rom誘導MFマウス)を用いて、骨髄線維化の解除に関わる分子機序を探索した。 C57BL/6マウスにRomを1、8日目に投与し経時的に大腿骨を採取したところ、11日目に骨髄の線維化が極期に達し、18日目には消失していた。15日目の骨髄細胞から抽出したmRNAのRNA-seqおよびエンリッチメント解析では①破骨細胞の分化に関わる遺伝子群、②好中球の脱顆粒に関わる遺伝子群とコラーゲンの分解酵素であるMMP-2,8,9の発現上昇を抽出した。 ①Romにより線維化を誘導したC57BL/6およびNOGマウスに対して、クロドロン酸リポソームおよび抗ヒトRANKL抗体を投与し、破骨細胞の除去による線維化解除の遅延を評価したが、有意な結果を見出せなかった。 ②MMP-2,8,9と生理的阻害物質であるTIMP-1について、Rom誘導MFマウスの骨髄細胞における発現量をRQ-PCRで評価したところ、Mmp-9 mRNAの発現は13日目を最大として、線維化解除の経過と一致して上昇した。解除期における大腿骨骨髄切片では分葉核球の増加を認め、免疫組織染色ではMMP-9とマウス好中球の特異的表面抗原であるGr-1の共局在を認めた。また別の骨髄線維症モデルマウスであるJAK2 V617F Tgマウスでは末梢血白血球におけるMMP-9 mRNA発現量が増加しており、MMP-9の血漿中濃度が上昇していた。さらにJAK2 V617F陽性の骨髄増殖性疾患患者の末梢血好中球では健常人と比較してMMP-9 mRNA発現量が増加していた。 以上から好中球が産生するMMP-9が骨髄線維化の解除に寄与する可能性が示された。
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