研究課題
マウス実験において、2型自然リンパ球をサイトカインで刺激すると、その細胞表面上にOX40リガンドなどのTNF型T細胞補助刺激分子が発現誘導されることがわかった。また、この誘導された補助刺激分子が活性化T細胞上に発現する受容体(OX40など)を刺激し、T細胞の活性化を増強することをみいだした。さらに、この2型自然リンパ球を介するT細胞活性化増強効果は、アレルギーだけでなく腫瘍免疫も活性化する可能性が示された。具体的には、B16悪性黒色腫細胞株をマウスに移植した後に、IL-33を投与し自然リンパ球を活性化させると、これら腫瘍細胞の生体内増殖が有意に抑制されることをみいだした。CD4やCD8の抗体を投与してT細胞を部分的に除去することで、この腫瘍免疫増強効果が減弱したことから、2型自然リンパ球活性化による腫瘍免疫増強効果はT細胞依存的である可能性が示唆された。自然リンパ球によるT細胞活性化増強作用はアレルギーと腫瘍免疫における共通メカニズムと考えられ、TNF型およびTNF受容体型T細胞補助刺激分子の遺伝子改変マウスを用いて上述の現象の分子メカニズムの詳細解明に取り組んでいる。一方、本研究者らがみいだした2型自然リンパ球活性化マーカーであるOX40やGITRおよびこれらのリガンドの発現について、アレルギー患者末梢血の2型自然リンパ球の解析を行った。その結果、患者と健康人でOX40やGITRなどの一部の分子についてその発現量に差異が認められることがわかった。さらに検体数を増やすことで知見の確からしさを検討中である。
2: おおむね順調に進展している
複数の新たな知見が得られたことから本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
アレルギー患者の解析においては、さらに検体数を増やすことで結果の確からしさを確認する。マウス実験においては、2型自然リンパ球によるT細胞活性化機構の詳細を解明していく。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
Sci Rep
巻: 10 ページ: 16617
10.1038/s41598-020-73935-y
Toxins
巻: 12 ページ: E547
10.3390/toxins12090547
FASEB J.
巻: 34 ページ: 14820-31
10.1096/fj.202001675R
Nat Commun
巻: 11 ページ: 3366
10.1038/s41467-020-17136-1
Cell Death & Disease
巻: 11 ページ: 617
10.1038/s41419-020-02845-8