研究実績の概要 |
本研究は、個別化医療を目指したIgG4関連疾患の病態解明を目的に遂行した。顎下腺炎組織のRNA-Seq解析では、非IgG4関連疾患症例の顎下腺組織と比較し、上方制御遺伝子が3,321、下方制御は1,485遺伝子が認められ、パスウェイ解析により、B細胞受容体やサイトカインシグナルが病態の中心となることが判明した。エクソソーム解析では、血清miR-125a-3p、miR-125b-1-3p濃度がシェーグレン症候群に比較し、有意に上昇していた。標的遺伝子をmiRデータベースで推定したところ、6つの遺伝子(GPC4、FOXC1、PTPN3、HCAR1、MFSD11、TACSTD2)が挙げられ、すべての遺伝子発現が、実際の顎下腺炎組織で低下していた。今後の新規治療法の開発に新たな示唆を与えるものであると考えられる。一方、レジストリデータとAIを活用して、治療反応性予測を行うアルゴリズムの構築を試みたが、今回は精度の高いものはできなかった。しかし、現在のメディカル・アンメットニーズでもある組織診断を使用しない非侵襲的な診断法に切り替え、再解析を実施した結果、精度の極めて良好なアルゴリズムの開発に成功した。HLA遺伝子型の検討においても、DRB1-GB-7-Val(Gβドメインの 7 番目のアミノ酸残基がバリンに置換:*04:01, *04:03, *04:05, *04:06, *04:10)保有者で治療反応性(血清IgG4濃度が最低値でのステロイド量が10mg以上、再燃あり)が不良であったことから、個別化医療につながる結果と考えられる。今後、HLAや標的遺伝子、マイクロRNAデータを含めたデータベースを再構築し、AIにより治療反応性、最適な治療法の提案につながる可能性が示唆される。
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