2022年度は、ベーチェット病(Behcet’s syndrome; BS)患者23人と健常人28人の末梢血20分画(好中球を含む)のフローサイトメーターとトランスクリプトームデータの解析結果をまとめ、論文化した。BSおよびBSの臨床的特徴に関連する遺伝子を同定するために、加重遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA)を実施した。 また、eQTLデータベースを使用して、BSの遺伝的リスク因子とそれらの遺伝子との関係を評価した。 BS患者ではTh17細胞が増加しており、mRNA発現解析ではBS患者のTh17細胞ではNFkB経路が活性化していた。WGCNAでは、抗原提示細胞の遺伝子群がBSと関連しており、パスウェイ経路ではBS患者で骨髄系樹状細胞をはじめとする抗原提示細胞の活性化を認めた。BSに関連する形質細胞様樹状細胞(pDC)遺伝子群にあるYBX3は、pDCのBSリスク多型の影響を受け、YBX3がBSの遺伝的リスク因子と病因を関連付ける可能性が考えられた。さらに、BSと最も強く関連する遺伝因子であるHLA-B51陽性とメモリーCD8陽性T細胞のIL-17 signature との関連が明らかにされ、IL-17産生CD8陽性T細胞 (T cytotoxic 17; Tc17)がBSにおいて重要な役割 を果たす可能性が示唆された。Tc17細胞とYBX3は、BSの潜在的な治療標的となる可能性が考えられた。
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