研究課題/領域番号 |
20K08772
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
渡部 良広 金沢大学, 附属病院, 特任教授 (50832185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗体誘導型ワクチン / 舌下感作 / エピトープ特異的抗体 / 抗体価上昇と親和性成熟 / IgA抗体クラススイッチ / SARS-CoV-2 S抗原 |
研究実績の概要 |
昨年度に見出したSARS-CoV-2の感染責任部位エピトープについて、その多価エピトープ抗原を作製して、マウス舌下に感作するプロトコールの最適化検討を行った。 明確なIgA抗体価の上昇は、感染防止に有効な粘膜免疫には必須の反応であり、週3回の間歇投与で2週間~4週間で明確に上昇した。IgAクラススイッチ前のIgG抗体価も同様に上昇した。IgAへのクラススイッチは、2週間の舌下6回投与で達成されており、舌下への感作は十分早いIgAクラススイッチを達成することを明らかにした。継続的な舌下感作において特異抗体価は維持される。従って、低下したIgG抗体および粘膜粘液の主要抗体クラスのIgA抗体価を上昇維持できる投与部位として、舌下の有用性が明らかとなった。 また、エピトープ認識抗体の詳細解析については、SARS-CoV-2ウイルス疑似感染系における中和能を検討し、疑似感染系での中和能を有するエピトープを3か所明らかにした。1か所はS2-HR2領域にあり、変異ウイルスに共通の”universal”エピトープであり、2か所はオミクロン株など変異体ウイルスで変異の認められる部位であることが判明した そこで、WT(武漢株)エピトープ認識抗体の変異体エピトープへの交差性を検討した。その結果、2か所の中和エピトープ認識抗体は、変異体にも良好な交差性を示した。このように、中和エピトープ同定によって、抗体誘導を中和部位に収束させ、その交差性を担保しつつ、効果的なワクチン有効性を維持しうることを明らかにした。 以上、エピトープ抗体の有用性を示し、舌下投与によるIgA抗体へのクラススイッチが短期間(2週間、6回投与)で確実に達成されること、およびエピトープ抗体のワクチン抗原としての有用性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この1年にエピトープワクチンの舌下感作の有用性を検討し、所期の目的である抗体親和性成熟とクラススイッチを把握した。その詳細を解析中である。 概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
舌下投与による抗体遺伝子再構成(親和性成熟とクラススイッチ)が起こっていることを、IgAクラススイッチの検証と抗体価の上昇で示してきた。 この舌下感作による免疫反応の上昇が、実際の感染阻害・感染阻止能に向上につながることを検討する予定とする。
具体的には、疑似感染系での感染阻止能能の向上の度合いの検討であり、またSARS-CoV-2感染系(in vitro/in vivo)での感染阻止能の検討である。本学のBSL3実験施設の稼働により、実施可能な段階となっている。 これに先立ち、舌下感作によるIgA抗体上昇の基盤データを活用して、その効果的な感作条件、間歇投与頻度、アジュバントの添加用人種類の最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたBSL3施設の稼働が遅れたことによる実験準備の遅れがあった。そこで並行して、他大学研究者との共同研究を打診し、実施することとした。この方針変更のために時間を要した。 また学内BSL3施設の稼働に伴い、施設使用のための実験関連経費の購入時期がずれ込んでいるが、今年度に本格化する予定である。 実験補佐員の募集において適切な人材が見いだされなかったが、今年度(R4年度)に採用し、実験補佐業務を行うこととなっている。
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