研究実績の概要 |
本期間にパンデミックとなった新型コロナ対応ワクチンの開発(AMED)に注力し、その中で、本研究課題の「抗体親和性成熟(中和抗体エピトープの同定とその抗原認識能の向上)」を検討して以下の結果と成果を取得した。 1)感染中和エピトープを3か所同定し、エピトープ提示抗原を作出した。2)通常の感作経路である皮下感作によってエピトープ特異的IgG抗体を誘導し、その中に単独エピトープ抗体でありながら中和能を有するエピトープを3か所見出した。3)舌下の繰り返し感作によって、IgG抗体価の一層の上昇とIgAクラスへのスイッチングが達成されることを明らかにした。4)1エピトープが既知variantsに共通で、2エピトープにはvariantsにおいて変異挿入が確認されるが、高い交差性を有した。5)3価エピトープを提示したワクチン抗原の舌下投与が、既存のS抗原ワクチンのブースターワクチンとして有用である可能性が示された。 これら結果および舌下ワクチンのプロトタイプは、舌下投与によるIgG抗体価の上昇とIgAクラス抗体誘導を見出したことによる成果である。本成果は、PCT出願(2022年)しVaccines誌(2023年)にて公開した。 更にまた、食物アレルギーの経口免疫療法(OIT)によるアレルギー症状の改善効果の機序解明を行い、OIT施行患者末梢血中のIgG, IgA, IgDまたはIgE抗体産生B細胞から単一細胞レベルで抗体CDRs領域の配列解析を行い、30種以上の組換え抗体を作出した。 食物アレルゲン認識能を有する組換え抗体を選別した後に、その特定クローンの上下クローナルツリーを作成し、上下クローンの組換え体を作出し、アレルゲン反応性を解析している。上記舌下感作によるIgA抗体誘導と同様に、IgAクローンのクローナルツリーが多く同定されている。
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