研究実績の概要 |
本研究では2つの動物モデルを用いて、脊椎関節炎(SpA)およびSLEの発症における腸内細菌叢の役割を明らかにした。 1.B6背景SKGマウスを用いて、腸内細菌叢とSLE発症の関係を検討した。Germ freeマウスではSLEを発症しないことから、SLEの発症には腸内細菌叢が必須であることを明らかにした。B6-SKGマウスではwild typeと比較し腸内細菌叢が偏移しており、とりわけSegmented Filamentous Bacteriaが増殖しT細胞をTh17へと分化誘導しSLE発症を促進していた。また、B6-SKGマウスでは、ZAP70変異によるT細胞シグナル伝達不全により、自己反応性T細胞の胸腺選択が促進する一方、腸内細菌反応性T細胞の胸腺選択が抑制され、dysbiosisが生じていることも明らかにした(Shirakashi, et al. Arthritis Rheumatology 2022)。さらに、Th17が全身性自己免疫疾患をドライブするメカニズムの一つとして、IL-17がIgGのFc部分の糖鎖を脱シアル酸化することで、自己抗体の炎症惹起性を高めることを明らかにした(Nakamura, et al. manuscript under revise)。 2. BALB/c背景のSKGマウスを用いて、腸内細菌叢とSpA発症との関係を検討した。DSSで炎症性腸炎を誘発すると、wild typeマウスでは腸炎のみがおきるが、SKGマウスでは腸炎とともに、付着部炎や関節炎などのSpA病態を発症することを明らかにした。さらに、SpAの発症には生体内への腸内細菌のtranslocationが影響しており、生体内に侵入する腸内細菌がwild typeとSKGにおいて異なっていることを明らかにした (Tabuchi, et al. Arthritis Res Ther 2022)。
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