研究課題/領域番号 |
20K08774
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松尾 裕彰 広島大学, 病院(医), 教授 (60346385)
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研究分担者 |
垰越 崇範 広島大学, 病院(医), 助教 (00457235)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IgE受容体 / 架橋 / 定量法 |
研究実績の概要 |
食物アレルギーなどのI型アレルギー検査に使用されている抗原特異IgE検査は、抗原に結合するがマスト細胞活性化のトリガーとなるIgE受容体の架橋能を持たない抗原に対する特異IgEによる偽陽性が認められることが問題である。本研究では、この偽陽性を減らし、検査精度をより高めたI型アレルギー検査方法の確立を目的としている。昨年度は、抗IgE抗体によるIgE受容体α鎖の架橋をAmplified Luminescence Proximity Homogeneous Assay(Alpha)法により検出できることを明らかにした。 今年度は、実際の抗原と患者血清IgEを用いてIgE受容体を架橋した時にAlphaシグナルの上昇が検出できるか否かを検討した。加水分解コムギによる小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者血清、抗原としてグルパール19Sを用い、IgE受容体α鎖を標識したAlphaドナービーズとアクセプタービーズと共に混合し、プレートリーダーにてAlphaシグナルを測定した。その結果、抗原添加によるAlphaシグナルの上昇は認められなかった。次に、アクセプタービーズを抗ヒトIgE抗体標識ビーズへ変更し、同時にドナービーズに標識されているIgE受容体α鎖のブロッキング剤として抗ヒトIgE受容体α鎖抗体、アクセプタービーズに標識されている抗ヒトIgE抗体のブロッキング剤として精製ヒトIgE抗体を用いた検出も試みた。しかし、抗ヒトIgE抗体標識アクセプタービーズを用いた方法によっても、抗原添加によるAlphaシグナルの上昇は検出されなかった。今後は、抗原-IgE抗体複合体を分離・濃縮した後、抗原によるIgE受容体α鎖を架橋する方法を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、抗原と抗原特異IgE抗体を有する患者血清、IgE受容体α鎖を標識したアクセプターおよびドナービーズを用いて、抗原によるIgE受容体の架橋の検出を試みたが、期待した結果が得られなかったため、検査法の確立に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、架橋能を有する抗原に対する特異IgE抗体の検出が出来なかった原因として、抗原によって架橋されたIgE受容体が少ないこと、血清に高濃度に含まれるアルブミンなどの夾雑物がAlphaシグナルを阻害していると推測される。そこで、抗原と血清を予めインキュベートし、抗原にIgEが結合した複合体を分離・濃縮した後に、IgE受容体α鎖を標識したドナービーズおよびアクセプタービーズを添加し、抗原によるIgE受容体の架橋を検出する方法を試みる。具体的には抗原を物質Aで標識し、物質Aと特異的に結合する分子をコートしたプレート上で抗原-IgE抗体複合体を形成し、夾雑物を洗浄後に抗原抗体複合体を遊離させ、ビーズを添加する方法により、現在の問題を解決する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が遅れているため、新規に開発する検査法の条件検討を次年度に実施するため。次年度初期に条件検討に使用する消耗品を購入する。
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