研究課題
免疫チェックポイント阻害療法施行に際し、治療前より経時的に末梢血単核球を採取するとともに、定期的に免疫関連有害事象報告を確認した。保存された末梢血単核球は、Tph細胞の同定のためCXCR5、PD-1、CD4、CD200による多重染色、および自己免疫関連B細胞の同定のためにT-bet、CD19、CD21、FcRL5による多重染色を行った。基礎的検討ではCD200陽性CXCR5陰性PD-1陽性D4陽性T細胞がIL-21やCXCL13を高発現するTph細胞であることを確認している。またPD-1の染色は、既に免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体投与後の場合は直接染色できないため、既報に従い抗PD-1抗体がIgG4抗体であることよりT細胞上でIgG4を染色することで間接的に検出している。(1)Tph細胞の検出;CXCR5陰性CD4陽性T細胞中PD-1陽性細胞は3~4%程度だが、ニボルマブやペンブロリズマブ使用により免役関連有害事象として甲状腺機能低下、皮疹、肝障害、副腎不全、劇症型1型糖尿病を認めた5例では、平均11.0%(5.75~17.0%)と上昇を認めた。(2)Tbet陽性B細胞;CD19陽性B細胞中Tbet陽性FcRL5陽性細胞は治療前3.0%だったが免役関連有害事象時には10.6%、Tbet陽性CD21陰性/低発現B細胞は治療前8.5%が免役関連有害事象時には15.7%と上昇を認めた。以上より、仮説通り少なくとも一部の免疫関連有害事象ではTph細胞およびT-bet陽性B細胞が出現することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
2020年度は以下の点を達成した。(1)臨床データおよび検体の収集と保管(2)Tph細胞およびT-bet+B細胞を含めた免疫担当細胞検出系の構築(3)実際の解析を進めることが出来た。その結果、仮説通り少なくとも一部の免疫関連有害事象ではTph細胞およびT-bet+B細胞の出現を認めることが明らかとなり、本研究の方向性が正しいことも確認できた。以上より、現在までの研究進捗状況は概ね順調に進展していると判断する。
2020年度の研究より仮説通りの結果が得られてきていることから、このまま計画を進めていく。今後の推進すべき点として以下を考えている。(1)フローサイトメトリーで検出されたTph細胞の機能解析。細胞分画の精製と発現遺伝子解析を行い確認。(2)PD-1+CD8+T細胞の動態解析および免疫チェックポイント療法の効果や免疫有害関連事象との関連の検討。(3)T-bet+B細胞の動態解析(4)引き続き検体、臨床データの収集と解析継続以上を2021年度進めていく。
研究は次年度も継続し、今年度費用では研究の消耗品購入額が不足したため、次年度予算を追加して購入予定である。
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