研究実績の概要 |
補体古典経路のinitiator proteinであるC1qに対する自己抗体(抗C1q抗体)は全身性エリテマトーデス(SLE)や抗リン脂質抗体症候群(APS)患者の血清中に高率に出現することを我々は明らかにしている(Oku et al, Rheumatology(Oxford), 2016)。更に、抗C1q抗体は補体古典経路の活性化を促し、それによって胎盤炎症と流産を惹起することを我々は報告した(Ohmura, Oku et al, Clin Immunol, 2019)。一方、胎盤および全身性の炎症は胎児の神経発達障害を誘発するとされているし、C1qが胎児の神経成長に重要な役割を来すことが知られている。すなわち抗C1q抗体はC1qの機能障害や炎症惹起を介して胎児の神経障害を起こしうる。実際、APSやSLEを罹患する母体から自閉症(ASD)スペクトラムの児が誕生しやすいとの報告もある。また、先行する抗C1q抗体を投与した流産モデルマウスの解析において、仔を出産した場合、ASD様の特徴を認めた数例を我々は確認している。 そこで本研究では、balb/c妊娠マウスへの抗C1qモノクローナル抗体(JL-1)を投与することによってASD仔を得て解析することを目的としている(ASDモデルマウス)。 当該年度は、先行実験のとおりにbalb-c妊娠マウスにJL-1を投与することによる流産や胎仔数の減少を確認した。また、先行する流産モデルマウスの実験を参考に条件検討を行っている。JL-1の投与時期(妊娠第2-12日目)、投与量(100ug/kg-1000ug/kg)などの組み合わせと出産の有無・出産仔数や仔の行動異常について解析を開始している。
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