研究課題
生体防御を担う白血球のうち、好中球は感染部位に大量に集積し、病原体が増殖・拡散することを防いでいる。近年、細菌などによって活性化した好中球は速やかに細胞を崩壊させ(NETosis)、核内から網状のDNA(好中球細胞外トラップ: NETs)を放出して、病原体を捕捉・殺菌する仕組みが明らかになった。申請者らは、好中球と同じ顆粒球に分類される好酸球も、活性化することにより細胞外トラップ(EETs)を放出するEETosisを初めて報告し、世界的にもこの分野の研究をリードしている。そこで本研究は、炎症組織を構成する顆粒球(崩壊した細胞や細胞外トラップ含む)そのものに注目し、細胞の固さ、弾力性、含水性といった材料工学的な性質を総体として評価し、全く新しい観点から炎症病態の理解を目指すものである。今年度は、ヒト末梢血から高純度分離した好中球、好酸球をそれぞれ刺激し、NETosis, EETosisを誘導した後、凝集体を作成した。この凝集体を用いて、細胞を材料工学的な観点からこれらの物性を評価した。細胞のレオメーターによる解析では、粘度とせん断速度依存性のレオロジカルな特性を測定した。また、重力による斜面すべりの検討では、材料上のすべりをタイムラプス撮影により評価した。疎水性・親水性の評価では、細胞を乾燥させたのち、接触角をImageJ analysisで算出した。これらの検討は予定通り実施され、好酸球の細胞凝集体は粘性が高く、斜面すべりが遅く、疎水性が高いことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定であった細胞の物性測定が実施でき、ほぼ想定通りのデータ取得ができた。
今後は、以下についてさらに検討をすすめていく予定である。熱重量の測定:示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)では、熱重量計による加熱時の重量変化を測定し、乾燥重量を評価する。示差走査熱量測定:示差走査熱量測定装置(DSC)によって水分子の高分子鎖への結合動向を解析し、中間水・不凍水・自由水の有無を検討する。各種顕微鏡による構造の解析:電子顕微鏡や分子間力顕微鏡で粘液の微細構造を評価する。
コロナによる影響で旅費が大幅に減ったこと、予定していたキットの購入を行わずに別の検討を先行して実施したため。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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