研究課題/領域番号 |
20K08796
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
奥西 勝秀 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (50401112)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サイトカイン / アレルギー / Rab27 / 調節性分泌 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、Rab27エフェクター蛋白質の一つエキソフィリン-5(Exo5)がIL-33依存的なTh2応答増強を抑制する、内因性の喘息増悪抑制因子として作用していることを、論文報告した。すなわち、Exo5が、①血球系細胞の中ではIL-5/IL-13高産性病原性Th2細胞に高発現しており、この細胞において、T細胞受容体刺激時におけるNADPH Oxidase NOX2の細胞膜への輸送を正に制御することで、T細胞受容体刺激時のIL-33受容体の発現増強を抑制し、IL-33依存的なIL-5/IL-13の産生亢進を制御していることや、②肺上皮細胞にも高発現しており、この細胞のintegrity を維持することで、刺激に応じた過剰なIL-33分泌を抑制していることを、国際的一流誌であるJ. Clin. Invest. 誌に報告した。なお、この論文は、アレルギー反応の新奇の制御機構を明らかにした論文として高く評価され、Commentary が付されると共に、別冊のJCI this month においても紹介された。その他、朝日新聞や上毛新聞でも、研究内容が報道された。その他のRab27エフェクター分子に関しては、本年度はまずは抗原感作期に焦点をあてて解析を行った。そして、複数のRab27エフェクター分子が抗原感作期において重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得た。さらに、そのうちの一つに関しては、その欠損により樹状細胞の抗原特異的Th2誘導能が亢進することを、樹状細胞、好塩基球、およびTh細胞の共培養系や、樹状細胞のマウス生体への移入実験により確認した。更に、このエフェクター分子由来の骨髄を移入した骨髄キメラマウスでは、アレルギー疾患の一つアトピー性皮膚炎を自然発症する可能性があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに申請者が独自に蓄積してきた十分量の予備的知見を基に、R2年度には、綿密な実験計画を練ることができた結果、無駄なく、非常に効率的に研究を遂行することができた。そして、Exo5に関しては、これまでの知見をまとめて、論文として報告することが出来た。また、研究実績の項で触れたように、いくつかのRab27関連分子がTh2応答の誘導に関与しており、その破綻がTh2応答の変化につながることを示唆する結果を、既に得ている。これらの分子に関しては、全て分子の欠損マウスを保有しており、また、研究実績の項で触れたような各分子の生理作用を解明するための実験も、既に行っており、大変興味深い知見を集積しつつある。以上の成果を踏まえると、本申請研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度までに得られた知見を踏まえ、R3年度にはまず、樹状細胞におけるその欠損がTh2応答を増強させる可能性が示唆されたRab27関連分子に焦点を当てて、解析を進めていく。一部の結果においては、まだ統計学的有意差が得られておらず、結果の再現性の確認を含め、同様の実験を繰り返す。その他、当該Rab27エフェクター分子の樹状細胞における生理作用を明らかにするために、樹状細胞をマウスから単離し、次の各種検討を行う予定である:1) 当該Rab27エフェクター分子や各種サイトカインの細胞内局在の同定:各種免疫染色や顕微鏡を使用。内因性の蛋白質のみならず、タグ付きの各分子を外因性に導入した系でも検討を行う。2) 各種サイトカイン受容体やNADPH Oxidase NOX2の発現レベル、および、細胞内局在の評価:樹状細胞上のTLR4受容体、IFN-gamma受容体やNOX2に関して、その発現レベルや局在を、無刺激時および各種刺激時で、野生型マウス由来の細胞と当該分子欠損マウス由来の細胞間で詳細に比較検討する。3) in vivo での評価:マウス喘息モデルや皮膚炎モデル(Th1型接触性皮膚炎モデルや、Th2型アトピー性皮膚炎モデル)において、各種免疫担当細胞の移入や除去が、アレルギー疾患モデルの表現型に与える影響を評価する。その他のRab27関連分子に関しても、その主たる作用細胞を同定した後、同様の各種検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度には、これまでの予備的知見を基に綿密に実験計画を練ることができた結果、無駄なく、非常に効率的に研究を遂行できた。さらに、科研費以外の資金も一部使用可能であったことから、次年度使用額を生じた。一方、R3年度には、抗原感作期において作用することが示唆された複数のRab27関連蛋白質に関して、それらの機能の分子基盤を解明すべく、数多くの実験を行う予定である。また、新たな実験系を確立する必要もあり、その場合、試薬も新たに購入する必要がある。以上から、R3年度には多くの費用が見込まれており、次年度に繰り越しとなった金額をそれらに使用する予定である。
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