研究課題
本研究は、全身性エリテマトーデス(SLE)のGWAS SNPであり、B細胞において比較的特異的な発現を認め、かつeQTL(expression Quantitative Trait Locus)効果が判明しているものの、機能未知であるFAM167Aの機能解明を端緒として、SLEのB細胞における代謝システムの異常に関する知見を得ることを目的とした。自己免疫疾患においてB細胞の抗体産生細胞への分化は病態の重要な面を担っており、その過程におけるmRNA、蛋白質、代謝産物に至る情報の流れをアンバイアスに繋ぐことでネットワークとしての制御機構を解明するトランスオミクス解析の手法を用いることにより、新規治療標的となり得る経路の同定が見込まれる。当初はFAM167A遺伝子欠損マウスを使用した実験を予定したが、トランスオミクス解析の実行には、各オミクス階層データ取得の時系列点の条件検討が肝であり、その条件検討のためには、マウス脾臓由来のB細胞を使用した実験系では細胞数が著しく不足することから、B細胞株であるRamos B細胞を使用して条件検討を行う方針に切り替えた。最終年度は、前年度からの継続として、B細胞をtype I IFNとTLR9で刺激した際の抗体細胞分化誘導系における代謝変容時点について、細胞外フラックスアナライザーを用いて検討し、その結果として判明した時点におけるメタボローム解析を行った。結果、それぞれの単独刺激と比較していくつかの変動代謝産物が同定され、そのうちヒスチジンはPLS-DA解析やRandom Forest解析で弁別アミノ酸の一つとして候補に挙がった。これはもともと申請者らがSLE患者の血漿メタボローム解析からも重要性を示唆していたアミノ酸であり、当該実験系がSLE B細胞の抗体産生細胞分化のモデル系として使用可能であることを支持する結果と解釈している。
すべて 2023
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Rheumatology
巻: 62 ページ: 905 913
10.1093/rheumatology/keac338