研究課題
疾患特異的iPS細胞を用いた全身性エリテマトーデス(SLE)病態研究、創薬研究を行っている。姉妹SLE症例から作成したSLE-iPS細胞は、樹状細胞に分化させると健常株と比較してI型interferon (IFN)産生が亢進していた。whole exome analysisを行い、IFNに関連する遺伝子における変異を探索したところ、複数の候補が同定されたが、スクリーニングの結果、機能的変異はOASLにおけるrare variantのみであった。この結果をSLE-iPS細胞株を用いて証明する実験を進めた。OASLはIFN signature gene(ISG)であるが、欠損させるとI型IFNが亢進したことより、negative feedback機構に関与する遺伝子であると考えられた。SLE-iPS細胞株をゲノム編集によりOASL WTに修正することで、dsRNA刺激に対するI型IFN産生が低下したため、SLE-iPS細胞株に存在するOASL variantは、IFNに対する抑制作用を減弱させていると考えられた。また、iPS細胞を樹状細胞に分化させ、薬剤添加によりI型IFN産生に与える影響を観察することで、薬剤スクリーニングにも使用可能な系であると考えられた。SLE-iPS細胞株を用いた疾患関連variantsの機能解析を推進するため、データベースで疾患関連のvariantsの検索を行った。SLEのゲノムデータベースを用いた検討では、OASL遺伝子になんらかのrare variantを有する割合は、SLE患者で健常人よりも有意に多く、またこれらのOASL variantsもI型IFN産生亢進に寄与することがわかった。以上の解析より、OASL rare variantsはSLE患者に集積しており、その機能異常によりI型IFN産生が亢進することがSLE病態形成に関与することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
SLE-iPS細胞を用いた病態解析の系は高い再現性をもって機能している。さらに新規rare variantsの同定と機能解析に進むことができており、順調に進展していると考える。
OASLによるIFN pathway制御の詳細な機序は明らかではない。OASLと細胞内RNAセンサーとの関連について、詳しい制御メカニズムの解析と、新たなSLE治療標的の同定を予定している。SLEデータベースから、OASLの他にもSLEと関連があると思われるrare variantsが複数同定されている。今後、SLE-iPS細胞を用いた新規rare variantsの機能解析を進める予定である。またSLE-iPS細胞から分化させた樹状細胞によるI型IFN産生を標的とした治療薬スクリーニングも進めていく予定である。
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