疾患特異的iPS細胞を用いた全身性エリテマトーデス(SLE)病態研究、創薬研究を行った。昨年度までに、姉妹SLE患者から疾患特異的iPS細胞を樹立し、またSLE姉妹の全エキソン解析により新たなOASL遺伝子多型を同定した。またiPS細胞のゲノム編集によるOASL遺伝子変異の機能解析、およびインシリコにおけるOASL変異の構造予測を行った。今年度は、IFIH1遺伝子変異に着目し、IFIH1からのシグナルにおけるOASLの役割、およびIFIH1の下流シグナルの制御による創薬の可能性について検討を行った。 IFIH1は細胞質内のRNAセンサーであり、IFIH1R778H変異は過剰なI型Interefron(IFN)発現による自己炎症性疾患の原因であることが知られている。OASL KO株ではIFIH1 R778Hによる過剰なIFN産生が制御された。またOASL変異株ではIFIH1 R778H株によるIFN産生が増強された。以上の結果からIFIH1によるシグナルにもOASLが関与していることが新たに判明した。IFIH1変異株によるIFNの過剰産生は、ミトコンドリア代謝の阻害、JAK阻害薬等で抑制され、SLEの創薬標的探索系としてのiPS細胞の有用性が期待された。 研究期間全体の成果として、SLE患者で新規に同定されたOASL変異は核酸刺激によるI型IFN産生亢進作用があることがわかった。従来のGWAS研究ではアプローチが難しかった中間程度の寄与力を有するrare variantによるSLE病態への関与について、遺伝学的研究にiPS細胞の活用を組み合わせることでアプローチが可能となった。本研究戦略による更なる自己免疫疾患の病態解明が期待される。
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