現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IgG4関連疾患への新薬候補を試すプラットフォームとすることを目的とし,マウスには同様の構造をもつサブクラスはないため,ヒトIgG4KIマウスの開発を行った.リンパ増殖性疾患の動物モデルであるMRL/lprマウスとの交配などの改良により,本モデルにおいて,血清IgG4濃度高値と,病理組織でIgG4陽性細胞の増加を認めた.さらに,MRL/lprマウスに比べて,MRL/lpr-IgG4KIマウスは,膵炎,胃炎などの所見が増強していた.MRL/lpr-IgG4KIマウスで炎症所見が強くなる理由を精査するため,MRL/lpr-IgG4KIマウスの脾細胞を採取してフローサイトメトリーで解析した.結果,MRL/lpr-IgG4KIマウスの脾臓において,CD69陽性リンパ球(活性化リンパ球)の割合が増加していた.また,MRL/lpr-IgG4KIマウスにおいて,CD4陽性T細胞(CD3+B220-CD4+),CD8陽性T細胞(CD3+B220-CD8+)の割合は低下していた.その代わりに,ダブルポジティブT細胞(CD3+B220+)の割合が増加していた.ダブルポジティブ細胞は,MRL/lprマウスに特異的な細胞であり,その免疫活性化病態に関与するとされる.一方,LAT/Y136FマウスはIgG4関連疾患に表現型が類似するため(Yamada, PLoS One, 13(6):e0198417, 2018),IgG4KIマウスとLAT/Y136Fマウスの交配を計画し,進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
IgG4関連疾患に表現型が類似するLAT/Y136Fマウスは唾液腺,膵で形質細胞が著増し,マウスIgG1陽性細胞が著明に増加する(Yamada, PLoS One, 2018).LAT/Y136FマウスがTh2優位となる点も,IgG4関連疾患の病態に近い.本年度は,IgG4KIマウスとLAT/Y136Fマウスの交配を進めた.今後は,LAT/Y136F-IgG4KIマウスの各臓器の標本を作製し,IgG4KIマウスおよびLAT/Y136Fの病理組織型と比較する.また,血中ヒトIgG4濃度を測定し,胃細胞中のTh1およびTh2細胞数の変化を免疫染色により解析する.一方,今年度,IgG4KIマウス,MRL/lpr-IgG4KIマウスについて学会で発表したところ,MRL/lpr-IgG4KIマウスにおいて発現するIgG4分子が,マウス体内のFcγ受容体に結合するかどうかが問題となった.文献上のデータ(Derebe, Immunol letter, 197:1-8, 2018)では,ヒトIgG4分子は,FcγRIに交差反応する.それを確認するため,HEK293細胞の表面ににマウスFcγ受容体およびアダプター分子を遺伝子導入により発現させ,MRL/lpr-IgG4KIマウス血清中のIgG4とin vitroで反応させる実験を計画している.
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