研究課題/領域番号 |
20K08804
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀三 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20535231)
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研究分担者 |
鬼澤 道夫 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (30783352)
渡辺 浩志 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40336467)
右田 清志 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60264214)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CXCL13 / Fli-1 / ループス様腎炎 / 全身性エリテマトーデス / ループスモデルマウス / ケモカイン / サイトカイン |
研究実績の概要 |
転写因子Fli-1は以前の研究で、サイトカイン、ケモカインの発現制御により全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に関与していることが示されている。例えば、Fli-1発現を抑制するとマウスループス様腎炎の予後が有意に改善する。今回我々は、B細胞の走化因子で局所のリンパ濾胞形成に関与するケモカインCXLC13に着目した(実際にヒトSLEでは活動期に血中CXCL13が有意に増加することが知られている)。マウスのSLE疾患モデルであるMRL/lprマウス、及び遺伝子操作によりFli-1ヘテロノックアウト(Fli-1-/-は胎生致死となる)としたFli-1+/-MRL/lprマウスを用いて、Fli-1におけるCXCL13発現への影響について研究を行った。その結果、血中CXCL13濃度及び腎組織におけるCXLC13 mRNA発現がFli-1+/-MRL/lprマウスで有意に減少していることが確認された。腎組織染色においては、CXCL13陽性細胞、CXCR5(CXCL13のレセプター)陽性細胞浸潤が有意に減少していた。一方ループス様腎炎では、糸球体病変がWTマウスで目立ったものの、間質への炎症細胞浸潤自体は両群であまり差がみられなかった。蛍光免疫染色にてCXCL13/CD11b陽性細胞の有意な減少も認められ、病態に関与していると考えられた。さらに、転写因子Sox4の有意な発現減少も認められた。Sox4はB細胞の分化において重要な役割を果たしている転写因子である。このようにFli-1はCXCL13陽性免疫細胞、CXCR5陽性細胞、腎組織のSox4発現を制御することにより、ループス腎炎におけるCXCL13発現に影響を与えていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎組織染色でやや難渋したが、いくつか新しい知見が得られている(上記)。今後はin vitroの実験系についてトライしていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は免疫細胞を抽出してCXCL13に対する走化性試験や、フローサイトメトリーを用いてのWT、Fli-1+/-マウスにおけるレセプター発現(CXCR5)の差異やサイトカイン発現などについて検討する。LPS刺激における免疫細胞のCXCL13発現亢進や、siRNAを用いたFli-1発現阻害によるCXCL13産生への影響等についても検討していく。可能なら、CXCL13の直接的な制御が行われているか、ChIPアッセイなど検討していく。 また、今回得られた知見に関しては積極的に学会発表をおこなっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
主にin vitroの実験物品に使用する(培地、細胞、サイトカイン、ケモカイン、標識抗体、フローサイトメトリー用品、病理標本作成、染色、スライド作成用品、cell migration assay用プレート、Fli-1特異的siRNA購入など) 他、ELISAプレートなど(自己抗体、サイトカイン等)
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