研究課題/領域番号 |
20K08807
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
千葉 麻子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40532726)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MAIT細胞 / 自己抗体 / 非蛋白抗原 |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)は抗dsDNA抗体など自己抗体の産生を特徴とした全身性の自己免疫疾患である。B細胞による抗体の産生には、同じ抗原を認識するヘルパーT細胞とB細胞の相互作用が重要である。ヘルパーT細胞はペプチド抗原を認識するため非タンパク抗原に対する抗体反応には直接関与しない。そのため自己DNA反応B細胞の活性化にどのような細胞が寄与するのかは不明である。mucosal-associated invariant T (MAIT)細胞はMR1分子に提示された非ペプチド抗原を認識するリンパ球である。SLE患者においてMAIT細胞は活性化しており病態への関与が推察されたことから、ループスモデルマウスをMAIT細胞が存在しないMR1欠損マウスと交配したところ、MR1欠損により抗DNA抗体の産生が減少することが明らかとなった。 本研究ではMAIT細胞を介した自己抗体産生細胞の分化・成熟メカニズムの解明を目的とした。ループスモデルマウスよりB細胞を単離してMAIT細胞もしくはヘルパーT細胞の存在下で培養したところ、MAIT細胞の存在により抗DNA抗体の産生量が増加した。MAIT細胞が非ペプチド抗原を認識するリンパ球であることから、タンパク抗原に自己反応性B細胞に及ぼす影響は少ないと推察された。そこで、自己蛋白抗原に対する抗体、抗RNP抗体のループスモデルマウスの血清中の濃度を調べたところ、MR1欠損に関係なく上昇が見られた。また、ヒトにおいて新型コロナウィルスmRNAワクチン後の免疫応答を調べたところ、スパイク蛋白に対する抗体反応は濾胞ヘルパーT、末梢ヘルパーT細胞の反応と関連していたが、MAIT細胞の数や活性化による影響は見られなかった。以上の結果より、MAIT細胞は特に非蛋白自己抗原に対するB細胞応答を促進することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MAIT細胞はDNAなど非蛋白自己抗原に対するB細胞反応促進に寄与するが、自己蛋白抗原に対する抗体応答には関与しないことがループスモデルの解析から明らかとなった。アデノウィルスベクターワクチンの効果においては、IFNaやIL-18を介して活性化したMAIT細胞が蛋白抗原の免疫応答を促進することが報告されている。そのため、SARS-CoV-2 mRNAワクチンにより誘導されるスパイク抗原に対するB細胞応答とMAIT細胞の関係性を検証したが、MAIT細胞の数や活性化状態と抗体反応には関連がないことが明らかとなった。以上の結果より、MAIT細胞は非蛋白抗原に対する抗体応答の促進に働くことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
MAIT細胞は抗原刺激以外にもI型IFNやIL-18などのサイトカインで強く活性化する。SLEの病態にはI型IFNの過剰産生が強く関与している。これまでにSLE患者の形質細胞様樹状細胞や単球においてIFNaの産生が亢進していること、SLE患者の単球はMAIT細胞を強く活性化することを報告してきた。現在、単球によるIFNaの産生など、ループス病態においてMAIT細胞の活性化に関わる経路の解明を進めている。
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