研究課題
免疫グロブリンE (IgE)とその高親和性受容体FcεRIは即時型アレルギーに関わる重要な分子である。本研究は、ヒトIgEのCε2部位が即時型アレルギー反応などにおいて重要IgE-FcεRIシグナルに果たす役割と、その機能部位を明らかにすることを目的とする。昨年度はCε2-Cε4に結合するFabライブラリーから、Cε2に結合するサブセットの選定を行い、機能アッセイをするためのツール作製を行った。本年度はこれらのサブライブラリーとツール群を用いて、機能的なスクリーニングを行った。選定されたCε2に結合するクローンは、驚くべきことにいずれもIgEのFcεRIへの結合阻害作用を示し、その阻害作用の強さは、すでに受容体に結合したIgEを剥離させる作用と比例していることが判明した。このうち作用の強い3つのクローンについて、マウスIgEへの結合性を調べたところ、マウスIgEには結合せず、ヒトIgEにユニークな領域に結合していることが判明した。そこで詳細な機能部位を探索するため、Cε2領域の7つのβシート構造をそれぞれマウスの配列に置換した組換えタンパクを作製した。また、IgEの低親和性受容体であるCD23への結合阻害作用も抗IgE抗体の臨床効果に関連する可能性が指摘されていることから、ヒトCD23を発現した細胞株の樹立を行った。これを用いてFabがIgEのCD23への結合を阻害できるか調べたところ、選択した3つのクローンいずれも結合阻害作用を示すことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
Fabライブラリーの機能的スクリーニング、および作用部位見当のための新規組換えタンパク質や細胞株の樹立が当初の予定通りスムーズに進行した。
次年度は本年度の成果である組換えタンパク質や細胞株を用いて機能部位の見当を行う。結合部位が絞り込めた場合には、さらに細分化した組換えキメラタンパク質を作製し、結合部位の検討を行う。また、ヒトマスト細胞株およびヒトFcεRIを発現したマウス骨髄由来マスト細胞を用いて、実際にIgEを介した反応を抑制できるかを検討する。
一部の実験において予定よりも安価に実験が進行できたため残額が生じた。次年度の検討に必要な細胞培養、抗体、およびマスト細胞を作製するためのマウス飼育等に使用する予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice
巻: 10 ページ: 1389~1391.e1
10.1016/j.jaip.2021.12.039
The Ocular Surface
巻: 22 ページ: 152~162
10.1016/j.jtos.2021.08.009
Cells
巻: 10 ページ: 1697~1697
10.3390/cells10071697
The Journal of Immunology
巻: 207 ページ: 3098~3106
10.4049/jimmunol.2100112
アロスエルゴン
巻: 1(2) ページ: 233-239
巻: 1(3) ページ: 370-379
https://research-center.juntendo.ac.jp/atopy_center/research/g1/