研究実績の概要 |
私達は, 重症慢性特発性蕁麻疹 (chronic spontaneous urticarial;CSU)患者の皮膚マスト細胞にはsubstance Pの受容体であるMas-related G protein-coupled receptor X2 (MRGPRX2)が高発現していることを報告した (J Allergy Clin Immunol 134:622-633, 2014). MRGPRX2のリガンドとして, angiopeptin, somatostatin, platelet factor 4などが報告されており, 様々な内因性因子がマスト細胞を活性化する可能性がある. substance P(SP)と70%のhomologyを示すhemokinin 1 (HK-1)は, MRGPRX2のリガンドではないかという仮説を立てCSUにおけるHK-1の役割を解析した. ヒトマスト細胞からのヒスタミン遊離50%効果濃度はSP(426 nM)よりもHK-1(5056 nM)の方が12倍高値であった。ヒトマスト細胞のMRGPRX2の発現をレンチウイルスshRNAサイレンシング法により抑制するとHK-1刺激によるヒスタミン遊離は完全に抑制された. 血清HK-1濃度は、健常人(n = 114)よりもCSU患者(n = 151)で有意に低かった(P < 0.0001). HK-1でマスト細胞を15分間前処理すると、SP刺激によるヒスタミン遊離量が有意に減少したが, MRGPRX2の急速なinternalizationは誘発されなかった. 健常者において高濃度HK-1は、MRGPRX2を介したマスト細胞の活性化を脱感作しSPによるMCの脱顆粒を抑制している可能性がある(Allergol Int, 2021, In press). 慢性特発性蕁麻疹患者と健常人の血漿中の脂質メディエーターを網羅的に解析(脂質メタボローム解析)も順調に進行しており、統計解析も終了した. 慢性特発性蕁麻疹患者と健常人との間で最も有意な差を認めた脂質メディエーターは, 5-hydroxyeicosatetraenoic acid (5-HETE)であった. 5-HETEはIgE依存性の好塩基球の活性化を有意に増強した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の内容はAllergol International誌に2021年4月に受理された. 慢性特発性蕁麻疹患者と健常人の血漿中の脂質メディエーターの網羅的解析(脂質メタボローム解析)も順調に進行しており、統計解析も終了した. いくつかの脂質メディエーターに注目し,ヒトマスト細胞と好塩基球を用いたin vitro実験を行っている.年内に論文を投稿予定である. アトピー性皮膚炎患者と健常人の血漿中の脂質メディエーターを網羅的に解析(脂質メタボローム解析)した. 結果を統計解析し, いくつかの脂質メディエーターに注目している.現在アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いてアトピー性皮膚炎の病態におけるそれらの脂質メディエーターの役割を明らかにするための研究が進行中である.従って, 概ね順調に研究は進展している.
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今後の研究の推進方策 |
慢性特発性蕁麻疹患者と健常人の血漿中および皮膚角質の脂質メディエーターを網羅的に解析(脂質メタボローム解析)した. 結果を統計解析し, いくつかの脂質メディエーターに注目している. 慢性特発性蕁麻疹の病態におけるそれらの脂質メディエーターの役割を明らかにする目的にてヒトマスト細胞と好塩基球を用いたin vitro実験を行っている.慢性特発性蕁麻疹患者と健常人との間で最も有意な差を認めた脂質メディエーターは, 5-hydroxyeicosatetraenoic acid (5-HETE)であった. 5-HETEはIgE依存性の好塩基球の活性化を有意に増強した.その機序を調べていく. 年内に論文を投稿予定である. アトピー性皮膚炎患者と健常人の血漿中および皮膚角質の脂質メディエーターを網羅的に解析(脂質メタボローム解析)し, 結果を統計解析してる. いくつかの脂質メディエーターに注目している. 現在アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いてアトピー性皮膚炎の病態におけるそれらの脂質メディエーターの役割を明らかにするための研究が進行中である.
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