研究課題/領域番号 |
20K08814
|
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
守田 吉孝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (50346441)
|
研究分担者 |
向井 知之 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (00454421)
平野 紘康 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10454828)
藤田 俊一 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30722607)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アンジオテンシンII / レニン・アンジオテンシン系 / アンジオテンシンIIタイプ1受容体 / 関節リウマチ / 炎症性骨破壊 / ヒトTNFトランスジェニックマウス / 関節炎モデル |
研究実績の概要 |
アンジオテンシンII は血圧や体液の調整を行っていることが知られているが、破骨細胞の分化成熟を促進させることで、骨吸収を亢進させることが明らかとなっている。しかしながら、関節リウマチなど炎症性骨破壊を起こす病態において、アンジオテンシンIIの役割については解明されていない。先行研究にて、関節リウマチのモデルマウスであるヒトTNFトランスジェニックマウスに対し、アンジオテンシンIIの持続投与を行ったところ、関節炎マウスの骨破壊が有意に増強することを明らかにした。本研究は、先行研究をさらに発展させ、関節炎状態における内因性のアンジオテンシンIIの役割について検討を行うこと、近年骨代謝の司令塔として注目されている骨細胞に焦点をあて、アンジオテンシンIIの骨代謝における役割を解明することを目的としている。 アンジオテンシンIIタイプ1受容体(AT1R)欠損マウスとヒトTNFトランスジェニックマウスの交配にて二重変異マウスの作成し、マイクロCT解析を用いてAT1R欠損が関節炎マウスの骨びらんや全身の骨量に及ぼす影響について検討した。その結果、先行研究とは異なり、二重変異マウスはコントロールマウスと比較して、関節炎部位の距骨の骨びらんの程度に差を認めなかった。また、組織学的にも骨びらんの程度や破骨細胞数の数に影響はみられなかった。さらに、椎体や脛骨の骨量にも影響は認められなかった。以上より、レニン・アンジオテンシン系が亢進していない(すなわち慢性腎臓病や肥満等の合併がない)状態においては、内因性アンジオテンシンIIは関節炎の骨破壊に影響を与えない可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のごとく、おおむね計画どおり、進捗している。 (A) ヒトTNFトランスジェニックマウスの骨破壊におけるAT1Rの役割の解明:AT1R欠損マウスとヒトTNFトランスジェニックマウスを交配し、二重変異マウスを作成、これらマウスの解析を完了した。具体的には、経時的な足関節腫脹を観察、16週齢時の足関節、脛骨および腰椎を摘出、組織学的な足関節の重症度を評価し、骨破壊の程度、骨量の評価を足関節(距骨)、脛骨、腰椎のマイクロCT解析、組織学的解析をそれぞれ行った。 (B) 骨細胞特異的AT1R欠損マウスの生理的及び病的状態における骨量の解析:骨細胞特異的なCre発現系統Dmp1-Creマウスを用いて、骨細胞特異的AT1R遺伝子欠損マウスを作出、さらにヒトTNFトランスジェニックマウスと交配して、三重変異マウスを作成した。上記(A)と同様に、経時的な足関節腫脹の評価を行い、16週齢での骨検体の回収を行った。現在、これらの解析を進めている。 (C) 骨細胞からの骨吸収・骨形成因子の発現にアンジオテンシンIIが及ぼす影響:骨細胞株であるIDG-SW3細胞の培養を行っている。既に、骨細胞マーカーやAT1Rを含めたレニン・アンジオテンシン系関連分子を発現していることを確認している。
|
今後の研究の推進方策 |
骨細胞特異的AT1R欠損マウスならびに、ヒトTNFトランスジェニックマウスとの交配にて作成した三重変異マウスの解析を進めていく。骨細胞特異的AT1R欠損が生理的骨代謝にどのような影響を及ぼしているか、マイクロCTで全身の骨量(椎体、脛骨)について解析を行う。また、ATR1欠損ではヒトTNFトランスジェニックマウスにおける炎症性骨破壊を軽減しなかったことを確認しているが、骨細胞特異的AT1R欠損時の影響について解析を行う。骨細胞株IDG-SW3細胞について、アンジオテンシンIIやTNFなどの炎症性サイトカイン刺激下で培養を行い、定量PCR法による遺伝子発現(Ocn, Sost, Dmp1, Rankl, Opg, Sdf1a, Runx2, Fgf23, Galnt3等)の解析を行う。
|
備考 |
川崎医科大学リウマチ・膠原病学のホームページで研究テーマとして紹介した。
|