研究課題
これまで、SLE患者末梢血におけるTfh細胞の増加と活性化Tfr細胞の減少がIL-2の減少により生ずること、IL-2を介したSTAT3とSTAT5の活性化がFOXP3及びBCL6遺伝子座における抑制型ヒストンマーカーの抑制を誘導することでメモリーTfh細胞から機能的Tfr細胞への変換を誘導することを報告した。昨年度は、これらの起点となるIL-2の発現低下の機序をゲノム異常の観点から検討した。IL21 antisense RNA 1(IL21-AS1)に存在する一塩基多型(SNP)rs62324212は、SLEに関連する遺伝子リスクバリアントであり、IL21-AS1の予測エンハンサー領域に位置することを示した。IL21-AS1は、SLE患者ではその発現が低下してており、IL21-AS1の発現はIL-21ではなくIL-2のmRNAレベルと正に相関していた。さらに、IL21-AS1発現と疾患活動性の間に有意な負の相関が認められ、IL21-AS1はSLEにおいてIL-2を介したTfr細胞の活性化に関与し、疾患活動性に影響を及ぼすと考えられた。今年度は、末梢性ヘルパーT(Tph)細胞の分化機序を検討した。その結果、(1)TGF-β3はTph細胞の分化誘導に重要を担うこと、(2)SLE患者末梢血では、疾患活動性と相関しながらTph細胞が増加していること、(3)活動性ループス腎炎の病変部位へのTph細胞の浸潤は、マクロファージから産生されるTGF-β3と相関してみられることが明らかとなった。以上より、 主に組織マクロファージから産生されるTGF-β3によるTph様細胞の誘導は、SLE患者のB細胞分化と抗体産生を促進することにより、活動性ループス腎炎の病態形成に重要な役割を担い、SLEに対する有力な治療標的となる可能性が示唆された。
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Rheumatology (Oxford) .
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10.1093/rheumatology/keac646