研究課題/領域番号 |
20K08816
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
迫 康仁 旭川医科大学, 医学部, 教授 (40312459)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 裂頭条虫 / テニア条虫 / 鑑別診断 / POCテスト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、寄生虫の鑑別診断を臨床現場あるいは流行現場で実施するために、特殊な装置を使用せずに実施でき、複数の寄生虫を同時に鑑別診断できる方法の基盤を構築することである。まずはヒトの条虫症(裂頭条虫症およびテニア症)に的を絞り、条虫の種特異的なDNAを増幅する方法を開発するとともに、イムノクロマトグラフィー(ICT)の手法を用いて、電気泳動をすることなしに増幅DNAを分別検出する方法を開発する。 令和2年度は恒温器などの簡便な機器や保温性の高い魔法瓶を利用することでDNAの増幅が可能な等温遺伝子増幅技術であるLoop-mediated isothermal amplification (LAMP)法を用いた裂頭条虫3種(日本海裂頭条虫、広節裂頭条虫、Dibothriocephalus dendriticus)ならびにテニア条虫3種(有鉤条虫、無鉤条虫、アジア条虫)の鑑別検査法の開発を行った。その結果、寄生虫種特異的なプライマーを数種類設計し、その中から特異性の高いプライマーを選出することで寄生虫の種特異的DNA増幅検査法を開発することが出来た。また、この時点で確立されたDNA増幅診断法は、1種の条虫に対し1つの検査反応チューブを必要とするため、検体が多数の場合、操作が煩雑である。そこで、1つの反応チューブで3種の条虫を検査できるDNA増幅法であるマルチプレックスLAMP法の開発にも成功した。現在は、開発に成功したマルチプレックスLAMP法の感度に関して解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
裂頭条虫3種(日本海裂頭条虫、広節裂頭条虫、Dibothriocephalus dendriticus)ならびにテニア条虫3種(有鉤条虫、無鉤条虫、アジア条虫)のLAMP法を用いた種特異的なDNA増幅検査法を開発するために、LAMP法のプライマー設計ソフトウェアであるPrimerExploreV5を用いて各寄生虫種のプライマーを数種類設計した。また、ミトコンドリアゲノム上のシトクロムcオキシダーゼ(COX1)遺伝子をDNA増幅の標的遺伝子とした。設計した数種類の中から種特異的なプライマーを選出することで各寄生虫種に特異的なDNA増幅法を開発することができた。さらに、1本の反応チューブで3種の寄生虫を検査するためのDNA増幅法のマルチプレックス化にも成功した。 以上より、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
開発した寄生虫種を鑑別検査できるマルチプレックスLAMP法の感度に関して解析を実施する。感度が低い場合は感度の向上が期待できるループプライマーの利用やプライマーの見直し等を実施し、感度の改善を図る。さらに、DNA増幅産物の検出用に市販されているICTスティック(HybriDetect 2T; Milenia Biotec社)を用いて、増幅DNAの分別検出法を開発する。このICTスティックは、抗DIG抗体と、avidinが異なる位置に塗布してあり、それらに補足された増幅DNAを、金粒子標識抗FITC抗体で濃紫のバンドとして検出することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
裂頭条虫試料に関しては日本国内で入手できるが、テニア条虫試料や患者糞便由来のDNA試料を入手することは困難である。そこで、流行国である中国、インドネシアならびにタイで開発する検査法の評価を行う計画を立て、長年共同研究を行ってきた海外研究協力者より承諾を得ていた。本年度は、研究打ち合わせのための外国旅費などを計上していたが、COVID-19感染症の流行により外国渡航禁止となった。そのため、次年度使用額が生じた。 今年度も、COVID-19感染症の流行の状況次第であるが、「研究打ち合わせ」と「検査法の評価」のための旅費に使用する計画である。
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