本研究の目的は、寄生虫の鑑別診断を臨床現場あるいは流行現場で実施するために、特殊な装置を使用せずに実施でき、複数の寄生虫を同時に鑑別診断できる方法の基盤を構築することである。まずはヒトの条虫症(裂頭条虫症およびテニア症)に的を絞り、条虫の種特異的なDNAを増幅する方法を開発するとともに、イムノクロマトグラフィー(ICT)の手法を用いて電気泳動をすることなしに増幅DNAを分別検出する方法を開発した。具体的には、恒温器などの簡便な機器や保温性の高い魔法瓶を利用することでDNAの増幅が可能な等温遺伝子増幅技術であるLoop-mediated isothermal amplification (LAMP)法を用いた裂頭条虫3種(日本海裂頭条虫、広節裂頭条虫、Dibothriocephalus dendriticus)ならびにテニア条虫3種(有鉤条虫、無鉤条虫、アジア条虫)の鑑別DNA検出検査法にICTスティック(HybriDetect 2T; Milenia Biotec社)による増幅DNAの分別検出法を組合わせた検査法の開発を行い、精度解析を実施した。LAMP法を用いた種特異的なDNA増幅検査法にはミトコンドリアゲノム上のシトクロムcオキシダーゼ(COX1)遺伝子を標的遺伝子とした。また、プライマーの一部(FIPプライマーならびにBIPプライマー)の5‘末端をFITC、Biotin、あるいはDIGで標識することでICTによる増幅DNAの分別検出を行った。 裂頭条虫DNA、テニア条虫DNA、その他寄生虫DNAを用いた解析により、本研究課題で開発した検査法は特異度が高く、迅速・簡便に結果が得られる検査法であることが明らかとなった。
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