本研究課題は、C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染に対して抗ウイルス治療によりHCV排除を達成した症例を対象とし、HCV排除後の肝癌発症および長期予後に関して、HCV遺伝子解析や脂肪性肝炎・インスリン抵抗性に関連したゲノムワイド関連解析を実施するものである。 HCV感染は、DAA治療によりほぼ100%でHCV排除が可能となったがにも関わらず、肝硬変・肝不全・肝細胞癌に進展する症例が一定の割合で存在することが、大きな臨床課題となっている。 初年度の研究では、DAA治療でHCV排除が達成された症例に対して、非侵襲的肝線維化装置であるフィブロスキャン測定、および脂肪肝炎に関連したPNPLA3遺伝子(rs738409)を測定し、遺伝的背景がHCV排除後の予後に強く関連することを報告した。 今年度は、肝癌治療歴を有する326例を対象とし、DAA治療後の肝癌再発の実態とそれに関連する因子を検証した。肝癌再発はHCV排除後・肝癌根治治療後にも関わらず、5年再発率は45.4%と高率であった。DAA治療前後のALT値、脂肪肝の有無、年齢、および性別は肝癌再発に関連せず、治療後のAFP値の推移、またはこれまでの肝癌治療回数・個数、肝癌治療からの年数が肝癌再発に有意に関連した。さらに、肝硬変394例を対象としたDAA治療後の肝機能の長期予後を調査した結果、DAA治療開始時のmALBI grade 2b群が、HCV排除後も非代償性肝硬変に進展するリスクを有していることが判明した。 今年度の研究結果より、肝癌再発は肝癌治療歴に関連する因子が大きく関わっており、初回肝癌に関連する因子とは大きく異なっていることが明らかとなった。
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