本研究課題は、C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染に対して経口抗ウイルス(DAA)治療によりHCV排除を達成した症例を対象とし、HCV排除後の肝癌発症および長期予後に関して、脂肪性肝炎・インスリン抵抗性に関連したゲノムワイド関連解析を実施するものである。 DAA治療でHCV排除が達成された症例に対して、非侵襲的肝線維化装置であるフィブロスキャン測定、および脂肪性肝炎に関連したPNPLA3遺伝子(rs738409)を測定し、遺伝的背景がHCV排除後の予後に強く関連した。 次に肝癌治療歴を有する症例を対象とし、DAA治療後の肝癌再発の実態とそれに関連する因子を検証した。肝癌再発はHCV排除後・肝癌根治治療後にも関わらず、5年累積再発率は45.4%と高率であった。DAA治療前後の肝機能、脂肪肝の有無、年齢、および性別は肝癌再発に関連せず、治療後のαフェトプロテイン値の推移、またはこれまでの肝癌治療回数・個数、肝癌治療からの年数が肝癌再発に有意に関連した。さらに、代償性肝硬変を対象としたDAA治療後の肝機能の長期予後を調査した結果、DAA治療開始時のmALBI grade 2b群が、HCV排除後も非代償性肝硬変に進展するリスクを有していることが判明した。 HCV排除後の肝線維化進展および肝発癌に関しては、特に肝癌治療歴のない比較的肝予備能が良好な症例において、脂肪性肝炎の存在が大きく関連し、それは関連遺伝子からも予測可能であることが明らかとなった。近年は代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)が定義化され、肝関連イベントのみならず動脈硬化性心血管疾患や慢性腎臓病など、様々なアウトカムの予測に有用である可能性が示されてつつある。本研究より肝疾患のマネジメント方法をさらに詳細に確立する必要がある。
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