研究課題/領域番号 |
20K08821
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森永 芳智 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (30580360)
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研究分担者 |
村田 美香 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30866976)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | colonization resistance / 薬剤耐性菌 / 共生細菌 / マイクロバイオータ / 糖 |
研究実績の概要 |
糖利用で変化する細菌叢データを基にして、着目した腸内細菌科細菌と嫌気性菌(クロストリジオイデス、バクテロイデス、アケルマンシア)を用いて、糖利用制限下・糖負荷下の増殖への影響を評価した。また、マウスに9種類の糖質を含んだ水を自由飲水させ、腸管内に残存する薬剤耐性菌の量を経時的に評価した。 マウスの腸管に感染可能なESBL産生性大腸菌の便中残存量を測定したところ、与える糖質を変えていくことで、残存するESBL産生菌が変化し、糖質自体が薬剤耐性菌の残存に影響することが明らかとなった。また糖質制限によってもESBL産生菌の菌量が修飾されることが明らかとなった。 また、in vitroにおいても利用可能な糖質により細菌の増殖が異なることが明らかとなり、これらは、漢方薬の中にもみられ、糖質を多く含む漢方の中で薬剤耐性菌の増殖に影響を及ぼすものがあることが明らかとなった。特に、通性嫌気性菌である大腸菌と、変性嫌気性菌の間に置いて、利用可能な糖により細菌の増殖大きく異なっており、腸内閑居における糖利用競争において、優先的に利用できる糖が存在することなど未知の糖利用機序があることが示唆された。 これらの成果は、2023年3月の嫌気性菌感染症学会で発表を行い、継続して研究を行うこととした。また、派生した成果として、遺伝子学的なプロファイルを整備する中で、Klebsiella quasipneumoniaeとKlebsiella pneumoniaeとが臨床検査では識別できずに混在していることが明らかとなり、感染対策などで用いられる菌株相同性解析上も両者が識別されないまま解析されることが分かった。それぞれが保有するβ-ラクタマーゼの違いを利用することにより両者の識別が可能であることが分かった。これらの進捗の内容は、2022年European Conference of Clinical Microbiology and Infectious Diseasesで4演題の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖代謝に関わる研究で、薬剤耐性定着に大きな影響を及ぼす糖質の特定にまでは至らないが、糖質制限下で定着率に影響が出ることが確認されたことは、in silicoのデータを元に着手した本研究がin vivoで所見を捉えた点で意義が大きい。 2022年度に糖質と漢方薬との知見を新しく得たため、本研究期間を延長して具体的な糖質の解析を追加することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は若手育成として、申請者所属の大学独自のカリキュラムである研究医養成コース所属の学部学生とともに研究を推進し、国内学会発表を行うことができた。研究機関を考慮して、現時点で論文化に着手している。 今回、糖利用が極めて薬剤耐性菌の腸内定着に影響することが明らかとなったため、腸内細菌叢を構成する他の細菌との関係の中での糖利用状況をより深く解析し、新しい独立したプロジェクトをスタートさせている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が進展し、新しく追加すべき検討を行ったものの、残された当初の研究期間では十分に評価ができなかっため、次年度にかけて継続検討することとしたため。
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