糖利用で変化する細菌叢データを基にして、着目した腸内細菌科細菌と嫌気性菌(クロストリジオイデス、バクテロイデス、アケルマンシア)を用いて、糖利用制限下・糖負荷下の増殖への影響を評価した。また、マウスに9種類の糖質を含んだ水を自由飲水させ、腸管内に残存する薬剤耐性菌の量を経時的に評価した。マウスの腸管に感染可能なESBL産生性大腸菌の便中残存量を測定したところ、与える糖質を変えていくことで、残存するESBL産生菌が変化し、糖質自体が薬剤耐性菌の残存に影響することが明らかとなった。また糖質制限によってもESBL産生菌の菌量が修飾されることが明らかとなった。さらに、マウスの腸管へのESBL産生性大腸菌の持続感染を促進する糖質を同定した。その結果、この糖質の利用に係る遺伝子候補も大腸菌の中で絞られたため、今後変異株を用いて関連遺伝子の特定へ発展予定である。 また、in vitroにおいても利用可能な糖質により細菌の増殖が異なることが明らかとなり、これらは、漢方薬の中にもみられ、糖質を多く含む漢方の中で薬剤耐性菌の増殖に影響を及ぼすものがあることが明らかとなった。特に、通性嫌気性菌である大腸菌と、偏性嫌気性菌の間に置いて、利用可能な糖により細菌の増殖大きく異なっており、腸内閑居における糖利用競争において、優先的に利用できる糖が存在することなど未知の糖利用機序があることが示唆された。 進捗の内容は、2023年11月の第93回日本感染症学会西日本地方会学術集会ならびに第71回日本化学療法学会西日本支部総会で合計5演題の発表を行った。
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