研究課題/領域番号 |
20K08825
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
河野 正充 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20511570)
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研究分担者 |
杉田 玄 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20407274) [辞退]
武田 早織 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20644090)
村上 大地 和歌山県立医科大学, 医学部, 準客員研究員 (30794218)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 侵襲性肺炎球菌感染症 / TLR |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は以下の通りである。 in vitro実験として、気道上皮細胞株Detroit562株と肺炎球菌株を共培養し、細胞間隙および基底層への菌の侵入を微速度撮影で評価した。肺炎球菌は細胞表面で増殖するだけではなく、細胞間隙にも侵入する像が確認された。 in vivo実験として、肺炎球菌の鼻腔保菌による菌血症自然発症(侵襲性肺炎球菌感染症)モデルを作成した。日齢4の授乳仔マウスにエリスロマイシン(Erm)、スペクチノマイシン(Spec)、カナマイシン(Kan)耐性遺伝子をそれぞれ導入した3種類の肺炎球菌6A株(ErmR株、SpecR株、KanR株)の等量混合液を経鼻接種し、3菌株による鼻腔保菌モデルを作成した。鼻腔保菌の成立後、菌血症を引き起こしたのちに、血液より分離される肺炎球菌株の検討を行った。野生型マウスにおいては、血液中から分離された肺炎球菌は1株あるいは2株であることが多く、鼻腔保菌から菌血症を自然発症する過程における強いボトルネック効果を確認した。次に各種Toll-Like receptor(TLR3,TLR7,TLR9)ノックアウトマウスにて同様の感染実験を行った。菌血症の発症率は野生型、TLR3 KO、TLR7ノックアウトマウスが20-30%であったのに対し、TLR9 ノックアウトマウスでは80%前後であり、TLR9シグナルが菌血症の発症抑制に重要であることが判明した。一方で、侵襲性肺炎球菌感染症の増悪因子であるインフルエンザウイルスを重感染させると、TLR3ノックアウトマウスで有意に高い菌血症発症率を認めた。一方で、各TLRノックアウトマウスにおけるボトルネック効果の変化を評価したが、野生型マウスと比較して明らかな変化が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vivoの実験系の遂行を優先したため、in vitroの実験系についてはやや遅れている。各種TLR KO(TLR3,TLR7,TLR9)にて感染実験を行い、肺炎球菌単独感染モデルでは菌血症の発症率は野生型、TLR3 KO、TLR7 KOが20-30%であったのに対し、TLR9 KOマウスでは80%前後であり、肺炎球菌とインフルエンザウイルスの重感染モデルではTLR3 KOマウスで有意に高い菌血症発症率を認めた。一方で、ボトルネック効果については大きな変化がなく、様々な感染条件の変更を行い、検討を行ったため、時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度において、in vitroの実験系を遂行する。TLRシグナルをノックダウンした気道上皮細胞株Detroit562株と肺炎球菌株を共培養し、細胞間隙および基底層への菌の侵入を微速度撮影で評価する。また、現在肺炎球菌の鼻腔保菌から深部組織への侵入過程におけるボトルネック効果の機序解明のために、生体恒常性維持において炎症制御機構として重要なTransient receptor potential(TRP)チャネルの影響を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金は2910円とわずかであり、次年度に予定通り使用する。
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