研究実績の概要 |
in vitro実験として、ヒト上気道細胞株であるDetroit562細胞と肺炎球菌との共培養モデルを確立した。肺炎球菌が細胞表面で増殖した後、細胞間隙に侵入し、上皮細胞層よりも深層で増殖している様子を微速度撮影および蛍光染色により確認した。 in vivo実験として、肺炎球菌の鼻腔保菌による敗血症自然発症(侵襲性肺炎球菌感染症)モデルを確立した。野生型マウス、各種Toll-Like receptor(TLR3,TLR7,TLR9)ノックアウトマウスおよびUnc93b1 KOマウスにて敗血症自然発症の感染実験を行った。菌血症の発症率は野生型、TLR3 KO、TLR7 KO、Unc93b1 KOマウスが20-40%であったのに対し、TLR9 KOマウスでは80%前後であった。一方で、侵襲性肺炎球菌感染症の増悪因子であるインフルエンザウイルスを肺炎球菌感染後に重感染させると、TLR3ノックアウトマウスで有意に高い菌血症発症率を認めた。一方で、インフルエンザウイルスを先行感染させるとUnc93b1 KOマウスが最も生存率が低下した。 鼻腔局所における免疫応答の評価として好中球とマクロファージの遊走を評価すると、肺炎球菌単独感染では、野生型マウスと比較して、TLR7 KO、TLR9 KOマウスではマクロファージの遊走が著明に増加していた。インフルエンザウイルスの先行感染モデルではTLR3 KO、Unc93b1 KOマウスにおいて好中球およびマクロファージの遊走が有意に減少した。肺炎球菌感染後のインフルエンザ重感染モデルでは、TLR3 KO、Unc93b1 KOマウスにおいて好中球の遊走が有意に減少した。 肺炎球菌は上皮細胞間隙に沿って深部組織に侵入し、侵襲性感染症を発症するが、肺炎球菌単独感染ではTLR9、インフルエンザウイルス重感染ではTLR3がそれぞれ侵襲性感染症発症を制御していると考えられた。
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