研究課題/領域番号 |
20K08830
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
小松 孝行 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (20215388)
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研究分担者 |
田中 幸枝 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10197486)
森田 奈央子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (20815881)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフラマソーム / パラミクソウイルス / アクセサリー蛋白質 |
研究実績の概要 |
インフラマソームは,自然免疫細胞を中心に発現する細胞質多タンパク質複合体で,感染や傷害に伴う危険シグナルに応答してIL-1βおよびIL-18の分泌を促進し炎症を惹起することによって抗ウイルス免疫を誘導する.そのため,ウイルスはインフラマソームの活性化を抑制する戦略をとる方が増殖に有利である.私達は,インフラマソームの再構成実験を用いて,「パラミクソウイルスのアクセサリー蛋白質に,インフラマソームの活性化を抑制する能力(抗インフラマソーム能)が保存されている」ことを明らかにした.アクセサリー蛋白質を発現しない組換えウイルスは弱毒化する.そのため,アクセサリー蛋白質やそれが関わる宿主因子はワクチンや治療薬の恰好の標的となる。しかし,現在のアクセサリー蛋白質欠損パラミクソウイルスは抗インフラマソーム能以外の機能まで喪失しているため,抗インフラマソーム能の役割を解明することは難しい.そこで本研究では,抗インフラマソーム能のみを欠失した変異アクセサリー蛋白質を作出し,パラミクソウイルスの病原性における抗インフラマソーム能の役割,抗ウイルス免疫におけるインフラマソームの重要性を明らかにする. 2020年度は,パラインフルエンザウイルスⅠ型(PIV1)とヒトメタニューモウイルス(HMPV)の変異アクセサリー蛋白質をデザインし,再構成実験を用いてその抗インフラマソーム能を評価した.PIV1の変異V蛋白質については現在検討中であるが,HMPVについては目的の変異アクセサリー蛋白質を分離することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は,抗インフラマソーム能のみを欠失した変異アクセサリー蛋白質を発現する組換えウイルスを作出することによって,パラミクソウイルスの病原性における抗インフラマソーム能の役割を明らかにすることである.そのための研究計画として,① 最初に最も研究の進んでいるパラインフルエンザウイルスⅠ型(PIV1)について,抗インフラマソーム能のみを欠失した変異V蛋白質をデザインし,それを発現する組換えPIV1を作製する.② ①の情報をもとに,他のパラミクソウイルスについても抗インフラマソーム能のみを欠失した変異アクセサリー蛋白質をデザインする.③ 計画 ①,②の情報から,パラミクソウイルスの病原性に関わる抗インフラマソーム能の役割を明らかにする.2020年度は計画 ①に従って,PIV1のV蛋白質の点置換変異体を作製し,再構成実験を用いて抗インフラマソーム能,抗インターフェロン能(抗IFN能)を評価した.作製した点置換変異体のうち,抗インフラマソーム能を喪失した変異体はすべて同時に抗IFN能も失っていた.引き続き抗インフラマソーム能のみを欠失した変異体の分離を実施している.さらに,計画②に従って,PIV1以外のパラミクソウイルスとしてヒトメタニューモウイルス(HMPV)のアクセサリー蛋白質についても点置換体の作製を実施した.HMPVでは抗インフラマソーム能のみを欠失した変異アクセサリー蛋白質の分離に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の結果では,当初計画していた抗インフラマソーム能のみを欠失したPIV1の変異V蛋白質の分離に成功しなかった.そのため,計画していた組換えウイルスの作製も行えていない.しかし同時に行ったHMPVの変異アクセサリー蛋白質は計画の性能を満たしたので,2021年度はまずはこの変異アクセサリー蛋白質を用いて研究を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行によって学会が中止となったため,旅費は使用しなかった. 当初計画してパラインフルエンザ1型(PIV1)の変異V蛋白質が作製できなかったので,作製に成功したヒトメタニューモウイルス(HMPV)の変異アクセサリー蛋白質を発現する組換えウイルスを作製するための合成遺伝子費用が必要となった.
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