研究課題/領域番号 |
20K08837
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安達 英輔 東京大学, 医科学研究所, 講師 (80725804)
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研究分担者 |
城戸 康年 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90511395)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 市中感染型MRSA / 性感染症 / 分子疫学解析 |
研究実績の概要 |
USA300株はPanton-Valentin leucocidin (PVL)毒素を産生する強毒なmethicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA)で、市中感染型MRSAとして米国を中 心として流行している。HIV感染や男性と性交渉のある男性 (Men who have sex with men: MSM)はUSA300株の保菌リスクとされる。 本邦におけるUSA300株は極め て稀であったが、近年HIV患者において報告数が増加しており、保菌率の調査とリスク因子の解析を目的とした。2019年12月から 2020年3月の間に当院を受診した HIV感染者に対して、PVL遺伝子がPCRにより、鼻腔のMRSA保菌調査を行い、分子疫学的に背景因子を解析した。PVL遺伝子が検出 されたものを分離し、全ゲノム解析を行い報告した。これらの成果は J Infect Dis. 24;223(4):610-620. (2021)に責任著者として発表している。 さらに昨年度は血液培養ボトル内の細菌の16sリボゾームのアンプリコンを解析を行った。HIV感染者における、血液培養ボトルや、血液検体を用いて直接メタ 16sのアンプリコン解析を行い、細菌のトランスロケーション等を評価することを目的とするものである。これまで、血液疾患による免疫不全者の血液培養ボト ルで陰性であったものを用いて、予備的な実験を行ったが、多くの場合、菌血症を反映しているのかどうか判別できなかった。しかしながら、これまでの研究でPVL-MRSAは日本のMSMで広く流行していることがわかり、今後は残りの研究期間で、他の性感染症との相互作用について解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、これまで国内ではまれであるとされてきたUSA300株の成人での流行が行っていることを示すという目標についてはほぼ達成されており、成果を報告した文献も海外の専門誌からすでに出版されている。現在は関連した細菌の解析を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
今回、ゲノム解析による分子疫学解析の手法が確立され、今後もメタゲノム解析を用いた菌種の同定を行うことを考えている。また、臨床現場においては、現 在もUSA300株だと思われるPVL産生の市中感染型MRSAを認めており、現在も流行が続いている。新規に網羅的な培養検査を行い、分離株の分子疫学解析を行うことにより新たな知見が得られることも期待できる。また、PVL-MRSAは性感染症の一種であり、他の性感染症との合併が見られることがわかった。今後は梅毒やエムポックス等との関連についても調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画の部分についてはすでに発表を終了しており、国際学会への参加や国内の学会発表がweb発表となり、旅費を使用する必要がなくなった。現在準備している論文のオープンアクセス論文掲載料や、本研究をさらに進めた他の性感染症との関連について解析するために使用する。
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