研究課題
本研究は、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)のアクセサリー蛋白質が備える宿主インターフェロン(IFN)システムを妨害する能力(抗IFN能)とその分子機構を明らかにすることを目的とした。前年度までの研究により、MERS-CoVのORF4bタンパク質が、Toll様受容体(TLR)-7/9依存性IFN産生経路(TLR7/9経路)を阻害することが明らかになった。さらにORF4bは、同経路のシグナル伝達に関わるリン酸化酵素IKKαと結合して、細胞質から核内に引き込むことが確認された。そこで本年度は、IKKαとのこうした相互作用が、TLR7/9経路の阻害に重要であるかを検証した。まず、核移行シグナル(NLS)に変異を導入したORF4b変異体(NLS変異体)はIKKαとの結合能を保持しつつ、IKKαとともに細胞質に存在することを確認した。このNLS変異体のIFN産生シグナル阻害能を評価したところ、野生型と比べて20%ほど減弱していた。転写因子IRF7のリン酸化阻害についても同等だった。これらの結果から、ORF4bによるIKKαの核内への引き込みは、TLR7/9経路阻害に関与するものの十分ではなく、別の阻害機構が存在することが示唆された。続いて、IKKαの恒常的活性化変異体を用いて、IRF7のリン酸化プロセスへの影響を評価した。その結果、ORF4bはIRF7リン酸化およびIFN産生シグナルを強く抑制することが明らかになった。一方、NLS変異体による阻害の程度は上記と同様、野生型と比べて減弱していた。以上の結果から、ORF4bによるIKKαの核内への隔離と、IRF7のリン酸化プロセスの妨害という、異なる2つの阻害機構がTLR7/9経路阻害に重要であることが示唆された。
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