デングウイルスに感染した患者の血管では、血小板の減少、血漿の漏出等の症状が起きる。この現象は、サイトカインや補体等、免疫系に関連する複数の遺伝子群の発現量の変化と連動していることが知られている。本研究では、培養細胞によるin vitroの実験系を用いて、血管内皮細胞がデングウイルスの感染によって受けるストレスを再現し、次世代型シークエンサー(NGS)を用いて、遺伝子発現を網羅的に調べる事で、デングウイルスに感染した患者において、血漿漏出等の発症を特異的に抑制する有効な治療法の確立のために必要なデータを収集することを目的とした。当初はベトナムHue県のHue中央病院において、デングウイルス感染症患者より血清サンプルを採取する。一人の患者から、デングウイルス感染症の病態の進行に合わせて、血清を複数回採取する。血清サンプルは、長崎大学ベトナム拠点を通して長崎大学熱帯医学研究所のウイルス学研究室に集積、保管する。という予定であった。本研究計画の提案、採択後、コロナウイルスのパンデミックが発生し、海外においてウイルス感染患者からのサンプル収集に関する計画について大きな変更を余儀なくされた。そのため、研究期間の延長を申請し、当初の計画の目的を満たすデータをとる方法について検討していたが、研究代表者が所属する研究室の研究者から外部の業者にサンプルの解析を委託し、次世代シークエンスのデータを取ることを提案された。現在、アゼンタ(旧Genewiz)社にサンプルを提出し、結果の報告を待っている。データ分析のワークフローについては既に構築済みである。アゼンタ社に依頼したRow dataより、細胞接着および炎症反応に関与する遺伝子のオントロジー分析を行い、計画本来の目的である血漿漏出のin vitroシミュレーションを達成する見通しである。
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