研究実績の概要 |
本研究の目的は、C型インフルエンザウイルス(C型ウイルス)がインフルエンザ弱毒生ワクチンのMaster Donor Virusとなりうるかを検討することである。A型インフルエンザウイルス(A型ウイルス)のHAタンパクとNAタンパクの両者を粒子の表面にもつ「組換えウイルス(C/Aウイルス)」を作製し、マウスにおける増殖能および粘膜免疫の誘導能を解析する。 2022(令和4)年度および全研究期間を通じて、以下の結果が得られた。 マウスにおけるC型ウイルス分離株の増殖能を解析した。発育鶏卵由来のC/Ann Arbor/1/50株をマウスの鼻腔に接種した(2.5×10^6 PFU/50uL/mouse)。感染3, 7, 10, 14, 28日後に鼻腔、喉頭、気管、肺中のウイルスM遺伝子のmRNAをリアルタイムPCRで定量した。鼻腔におけるmRNA量は感染3日後にピーク値(5.1×10^5コピー)を示し、その後漸減した。この傾向は他の臓器でも同じであった。このことはC/Aウイルスもマウスにおいて増殖することを示唆する。 C/Aウイルス作製のために、1)両端にC型ウイルスHEF遺伝子の非コード領域をもつHA遺伝子、2)両端にC型ウイルスのHEF遺伝子の非コード領域をもつNA遺伝子、3)両端にC型ウイルスのHEF遺伝子の非コード領域をもつHA-IRES-NA遺伝子をウイルスRNA発現ベクターにクローニングした。そしてミニレプリコンシステムで293T細胞にタンパクを発現させた。1)と2)においてのみ、HAおよびNAタンパクの発現を確認できた。 過去2年度の成績と併せ、目標の達成に向けた知見を蓄積できたといえるが、RNA発現プラスミドの遺伝子配列を工夫する必要性が示唆された。
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