NKT細胞欠損マウス(Jα18 KO)を用いた鼻咽頭定着マウスモデルを確立し、鼻咽頭定着菌数がNKT細胞欠損マウスにおいて、感染21日目で増加することが判明した。NKT細胞のリガンドであるαガラクトシルセラミドの投与により肺炎球菌の鼻咽頭定着菌数が減少したことから、鼻咽頭における肺炎球菌のクリアランスにおいてNKT細胞が関与している可能性が示唆された。しかし、これまで使用していたNKT細胞欠損マウスにおいて、NKT細胞以外の一部のT細胞にも影響が出ることが判明したため、2016年に理化学研究所で新たに樹立されたNKT細胞欠損マウス (Jα18 KO)を購入し、これまでの研究成果の再現性について確認実験を行ったが再現性が得られなかった。 肺炎球菌の鼻咽頭定着性と関連する病原因子の一つに線毛がある。鼻咽頭定着を制御する肺炎球菌ワクチンの戦略として、定着因子をワクチン抗原とした新規ワクチンの開発を目指し、ワクチン抗原候補として線毛タンパクを挙げ、線毛欠損株の作成と線毛タンパクのクローニングを試みた。線毛タンパク欠損株は、ゲノムDNAから増幅したターゲット遺伝子のDNA断片をTA cloningし、E. coli DH5αに形質転換後、PCR断片とエリスロマイシン耐性遺伝子とつなぎ合わせ作成した遺伝子破壊用DNAを肺炎球菌に形質転換し、エリスロマイシン含有培地で遺伝子破壊株を選択し、作成に成功した。また線毛タンパクの精製では、肺炎球菌TIGR4株 (標準株)の線毛タンパク質をコードするRrgA領域を増幅したPCR産物を、pColdⅠDNAベクターのマルチクローニングサイトに挿入し、発現用プラスミドを作製した。発現用プラスミドで大腸菌TaKaRa Competent Cells BL21を形質転換し、アンピシリンを含むLB培地に植菌後37度で培養し菌体とその上清を回収した。回収したサンプルから、SDS-PAGEでRrgAモノマーと想定されるおよそ100kDaのバンドを確認した。
|