研究課題/領域番号 |
20K08850
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松尾 一彦 近畿大学, 薬学部, 講師 (70615921)
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研究分担者 |
中山 隆志 近畿大学, 薬学部, 教授 (60319663)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ワクチンアジュバント / メモリーCTL / Th17 / P2受容体 |
研究実績の概要 |
P2受容体が粘膜組織特有のCD70陽性樹状細胞を介してTh17細胞を誘導すること、またメモリーCTLの生存維持に関わることに着目し、P2受容体によるエフェクター/メモリーCTLの誘導および維持機構を解明し、P2受容体リガンドである加水分解抵抗性ATPのアジュバントとしての有用性を明らかにすることを目的とする。 本年度は、加水分解抵抗性ATPによるTh17細胞およびエフェクター/メモリーCTL誘導能について検討した。モデル抗原OVAと加水分解抵抗性ATPを経鼻投与し、鼻粘膜、鼻咽頭関連リンパ組織、頚部リンパ節を回収した。Th17細胞はCD4+IL-17+細胞として、エフェクター/メモリーCTLは、エフェクター期(免疫1週間後)とメモリー期(免疫8週間後)にCD8+IFNg+細胞としてフローサイトメトリーにより解析した。その結果、モデル抗原OVAを単独で投与した場合に比べて、加水分解抵抗性ATPの投与により、Th17細胞およびエフェクターCTLの誘導が有意に増強されることを明らかにした。また、最終免疫の8週間後のメモリーCTLが形成される時期に、頚部リンパ節に存在するメモリーCTLの割合を解析したところ、加水分解抵抗性ATPを投与したマウスでは、OVA特異的CTLの検出された。 これらの結果より、加水分解抵抗性ATPがエフェクター/メモリーCTLを誘導できるアジュバントとしての活性を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の根幹となる加水分解抵抗性ATPによるメモリーCTL誘導能を検証する項目について、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず加水分解抵抗性ATPによって誘導されたエフェクターCTLおよびメモリーCTLが抗腫瘍活性を示すかどうかについて検討する。 また、加水分解抵抗性ATPの受容体であるP2受容体は、CD70陽性樹状細胞に多く発現しており、加水分解抵抗性による抗原特異的免疫応答の誘導に最も関与すると考えられる。そこで、加水分解抵抗性ATPにより刺激したCD70陽性樹状細胞の活性化マーカーの発現、メモリーT細胞誘導に関与する分子の発現、T細胞分化に関与するサイトカイン産生についてフローサイトメトリー、ELISA、qPCRにより解析する。 このように、加水分解抵抗性ATPによる病態改善効果および、CD70陽性樹状細胞を介した免疫誘導機構について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響で、研究計画が多少変更になり、多少の繰越が生じた。これについては、次年度に請求する研究費と合わせて使用する計画である。
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