本研究の目的は、P2受容体が粘膜特有のCD70陽性樹状細胞に発現すること、また、メモリーCTLの生存維持に関与することに着目し、P2受容体を介したエフェクター/メモリーCTL誘導およびその維持機構を解明し、P2受容体のアゴニストである加水分解性抵抗性APTのワクチンアジュバントとしての有用性を検証することである。 本年度は、加水分解抵抗性ATPにより刺激したCD70陽性樹状細胞の免疫誘導機構について検討した。CD70陽性樹状細胞は加水分解抵抗性ATPの刺激により、Th17細胞分化に必要なIL-6やTGF-betaの活性化に関わるインテグリンの発現増加が認められた。そして加水分解抵抗性ATPにより刺激したCD70陽性樹状細胞とCD4陽性T細胞を共培養した結果、Th17細胞のみの誘導が増強され、Th1細胞やTh2細胞の誘導は見られなかった。一方でCD70陰性樹状細胞ではこれらのことは観察されなかった。また、加水分解抵抗性ATPをアジュバントとしてモデル抗原OVAを鼻腔内投与したマウスにおいて、鼻咽頭関連リンパ組織においてはTh17細胞の増加が認められ、所属リンパ節内においてはTh17細胞およびCTLが増加した。近年、Th17細胞が直接あるいは間接的にCD8陽性CTLの誘導に関与することが報告されている。これらの結果から、加水分解抵抗性ATPはTh17細胞の誘導を介してCTL誘導を増強することが示唆された。
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