研究課題/領域番号 |
20K08853
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
鈴木 里和 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 室長 (30373400)
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研究分担者 |
小林 彩香 帝京大学, 医学部, 講師 (30962873)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Bacillus cereus / 血流感染症 / 院内感染 |
研究実績の概要 |
今年度、異なる医療機関の血流感染症患者由来10株および病院給食由来株2株を入手しゲノム解析を実施した。MLST解析から血流感染症患者由来株10株のうち4株はST365-complexに属していた。当初日本国内でのハイリスククローンと考えられたST1420 はallele番号では62-1-93-109-55-102-210となりST365の34-1-32-1-18-33-24とは1alleleのみの一致であるため、allele番号の一致数による分類であるST365-complexには属しない。しかし、昨年度同様、7つのalleleをすべて連結したconcatenate配列の系統解析とPriestらの分類名に基づくと、ST1420とST365 complexはいずれもB. anthracisに近縁とされるclade1のCereusIIIに属していた。ST365 complexに属する株は国内の異なる地域の医療機関より散発的に分離されており、血流感染症の割合が高かった。 今年度解析を行った、ST365 complexに属する株のうち2株は新規alleleを含む新規STであった。B. cereus血流感染症や院内感染事例の報告は海外に比べ日本からが多いこと、ハイリスククローンとして報告されたST1420も新規STであったことから、我が国特有のB. cereus系統株が国内に広く存在し、感染症、特に血流感染を引き起こしている可能性が示唆された。さらに、今年度の臨床情報の収集からB. cereusの血流感染症は採血時の汚染との鑑別が困難な症例から、数日で死に至る転帰となる劇症型の症例に分かれ、この劇症型血流感染症とST365-complexとの関与が示唆された。今後はこれら劇症型血流感染症由来の菌株のゲノム配列上の特徴を明らかにし、病原因子および検出に有用な遺伝子配列の検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
複数の医療機関や地方衛生研究所等から臨床検体由来および食品由来のB. cereusを収集予定であったが、研究期間とCOVID-19の流行がほとんど重なり、予定の規模の菌株の収集は実施不可能となった。そのため、本研究開始前より保存されていた株、および研究期間中に少数ながら得られた株での解析に限定せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた規模での菌株の収集および臨床情報の収集の実施は不可能と考えられたため、これまで収集された菌株のゲノム情報と、それらの菌株が分離された症例の臨床情報の統合的解析を実施する。これまでの検討により、研究計画時にハイリスククローンとしていたST1420の分離頻度が稀であるとともに、異なる地域の血流感染由来株はST365 Complexに属することが明らかとなった。ST365 Complexに属する株の症例は、同じ血流感染症であっても発症後数日で死に至る重篤例が観察されていることから、数日で治癒した症例の分離株とのゲノム比較を実施するとともに、PubMLSTといった公共DBでの登録株とも比較することでハイリスククローンの遺伝的特性を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行により、医療機関との共同研究が遅延し、菌株および臨床情報の入手が令和4年度末となった。そのため、詳細な解析・追加のゲノム解析などを次年度に実施することとした。
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