研究実績の概要 |
糖尿病などの代謝異常を伴うことなく平均BMI 21.67のlean-NAFLD 275人をcaseとし、1411名のcontrolとの間でゲノムワイド関連解析GWASを実施した結果、主要な脂肪肝関連遺伝子とされてきたPNPLA3と TM6SF2に有意な関連を認めず、Chr6, 7, 12, 13に関連を示唆する新たな遺伝子座を見いだした。Chr6のlead SNPはBTLN2遺伝子に位置し、Chr7のleadSNPは、CNTNAP2遺伝子イントロン14のMIR548Tコア配列近傍にマップされ、Chr12の lead SNPは、1.5Mb以上にわたり21遺伝子を載せる巨大な連鎖不平衡ブロックにマップされ、Chr13のlead SNP近傍にはGPC6, DCT, TGDS, GPR180が存在した。これらのlead SNPを9726人の日本人一般集団において検証した結果、Chr6, Chr7, Chr13のSNPは肥満型を含む一般のNAFLDでも有意に関連を示すことが明らかなった。このうちもっとも深い関連を示したChr6のSNPは、HLAclassIと classIIの間に位置する座位であり、HLAタイピングの結果、HLA-B*54:01アレルがNAFLDリスクアレルであると示唆される結果が得られた。さらに、このアレル保有者は、mucinaseを産生し糖質吸収改善に働く可能性が示されているAkkermansia属を有意に抑制することが明らかにし論文として公表した。また、Chr13の関連領域を、4遺伝子のshRNAを載せたAAV8をマウスにインジェクションすることによって肝臓でノックダウンし、肝臓脂質レベルの変化を比較した結果、GPR180遺伝子がこの領域における機能遺伝子の可能性が示唆され、ノックアウトマウスを用いた機能的検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として挙げた到達目標の進捗状況は以下の通りである。 1) SNPの機能解析a) lean-NAFLDのChr6関連連鎖不平衡ブロック内のlead SNPから関連HLAアレルを見出すとともに、腸内細菌叢解析によって病態に関係する機能を持つ細菌Akkermansia属を見出した。また、Chr13の関連領域周辺にコードされる4遺伝をshRNAを載せたAAV8によってスクリーニングし、機能性遺伝子候補を絞り込んだ。b) GWASで深い関連を示したlead SNPは5,649人のゲノムコホートパネルと21,000人の横断的ゲノムパネルから抽出した4,077人のゲノム、合計9726サンプルを用いて大規模に検証した。 2) NAFLD病態関連遺伝子への分子標的治療の可能性を検討a) Wntシグナルレポーター細胞の母体となるNIH/3T3細胞においてCRISPR/casシステムを用い関連遺伝子を破壊した細胞を樹立可能であることを確認した。b) 関連遺伝子に対するモノクローナル抗体の作製、Wntシグナルレポーター細胞を用いた機能的検証は、現在、準備中である。
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