研究課題/領域番号 |
20K08871
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
後藤田 貴也 杏林大学, 医学部, 教授 (60322062)
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研究分担者 |
山本 隆史 杏林大学, 医学部, 助教 (00572033)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キヌレニン / 糖代謝 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
・KAT-2 KOマウスでは高脂肪食負荷により肥満・耐糖能の悪化・インスリン感受性低下を認め、肝重量は有意に増加し肝におけるTG含量と脂質合成関連遺伝子発現の増加も認めた。さらに解析を進めた結果、①組織中のキヌレン酸濃度はKOマウスの肝臓及び骨格筋で有意な減少を示す一方、脂肪組織では低下傾向にとどまった。キヌレニン代謝の主経路である3-HKやNADの肝濃度には変化を認めず、②KAT-2 KOマウスでは白色脂肪組織におけるPPARg, HSL遺伝子の発現低下傾向を示し、GLUT-4, FABP4, adiponectin及びPEPCKについては有意な低下を認め、血中アディポネクチンはむしろ有意な増加を示すというmRNAレベルとは矛盾する結果となった。③骨格筋においては測定した糖代謝関連遺伝子の発現には変化は認められなかった。④肝臓における脂肪酸分解系の遺伝子発現にも有意な変化は認められなかった。以上より、KOマウスにおけるキヌレン酸レベルの低下が肝脂質合成と肝重量の増加を引き起こし、肝臓における過剰な脂質蓄積により本KOマウスではインスリン感受性が低下している可能性が考えられた。本KOマウスの脂肪重量は野生型マウスと変わらないため、白色脂肪組織の増加が肥満の原因とは考えられないが、糖代謝関連遺伝子の発現低下を認めたため、脂肪組織においてインスリン感受性も影響を受けている可能性が考えられる。 ・病態モデル動物におけるキヌレン酸濃度を測定し、STZ投与による1型糖尿病モデルマウスや絶食後高ショ糖食再摂食負荷による一過性のインスリン抵抗性モデルマウスの血漿キヌレン酸濃度が有意に上昇した。2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスにおいても肝キヌレン酸濃度の上昇が認められた。以上より、組織中のキヌレン酸レベルは肥満や糖尿病の病態と関連があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次年度ではKMO遺伝子の阻害剤を用いてin vivoで一定期間持続的にキヌレン酸濃度を増加させて耐糖能との関連を検討する予定であるが、その準備段階として行っている基礎検討において本阻害剤を適切に溶解し投与しうる条件を見いだせていないから。
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今後の研究の推進方策 |
外因性のキヌレン酸の投与実験は、既報でいくつか使用例があるためそれらを参考にし、継続的なキヌレン酸の投与が耐糖能に与える影響を検討したい。内因性キヌレン酸をin vivoで増加させる方法についてはkynurenine 3-monooxygenaseのshRNA発現アデノウイルスをマウスに接種する方法を用いる。アデノウイルスは大部分が肝臓に感染するため、肝臓特異的なKMOの抑制と内因性キヌレン酸の増加を引き起こすことが可能となる。本操作により、KAT-2 KOマウスとは反対にキヌレン酸濃度の上昇が耐糖能の改善を引き起こす分子メカニズムを解明したい。
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