研究課題/領域番号 |
20K08872
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
西森 茂樹 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (30838488)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軟骨細胞の分化発生 / 骨細胞の分化発生 / 副甲状腺ホルモン / 副甲状腺ホルモン関連タンパク / 細胞内シグナル伝達 / 骨粗鬆症 / 再生医学 / マウス遺伝学 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは軟骨細胞及び骨細胞においてPTH/PTHrP(副甲状腺ホルモン/副甲状腺ホルモン関連タンパク)受容体の下流で働き、骨軟骨系細胞の分化を制御する新規の細胞内シグナル伝達系を解明しました(JCI Insight. 2019、JCI. 2019、Bone 2021にて発表)。 PTHとPTHrPは同じ受容体を共有しながら、制御する細胞も効果の方向も異なります。PTHは内分泌因子(ホルモン:副甲状腺で合成され、血流を介して骨に至る)として骨細胞の分化促進に働き、骨粗鬆症(国内の推定患者数約1300万人)の治療薬として、臨床の現場で使用されています。PTHrPは局所因子(パラクリン:軟骨細胞内で合成され、近隣の軟骨細胞に作用する)として軟骨細胞の骨細胞への分化を抑制し、関節内の軟骨を若い状態に保ちます。将来的には、変形性膝関節症(同約1000万人)の治療薬として、軟骨組織を維持する効果が期待されます。 研究代表者らはPTH/PTHrP受容体下流の細胞内情報伝達系で、促進分子(Salt inducible kinase、Myocyte enhancer factor)と抑制因子 (Histone deacetylase)を解明しましたが、これらの分子に作用するSmall Molecule(小分子量物質)が同定できれば、現在、合成ペプチドの注射剤しかないPTH及びPTHrPと同等の効果を持つ経口薬の開発につながります。 上記の促進因子と抑制因子のノックアウトマウスまたは過剰発現マウスを各種組み合わせたマウスの組織学上の形態変化の解析を研究の中心とし、背後で働く分子メカニズムを解析しています。前年度に引き続き、これまで未知だった四肢長幹骨の骨端成長板で球形軟骨細胞から扁平軟骨細胞への分化で働く遺伝子群をマイクロアレー解析で選抜し、分子メカニズムを検証しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響で、前任地のアメリカの研究所で作成・飼育していた各種ノックアウトマウス及びトランスジェニックマウスの輸送が困難な状況が続き、マウスの研究が遅延しているため、遅延しています。 3種類の遺伝子を組み合わせ、トリプルノックアウトマウスの作成し、新生児または胎児の膝軟骨の解析を行なっていますが、個々のノックアウトマウスが生殖可能年齢まで生存できないため、トリプルヘテロマウス同士を掛け合わせています。交配の結果、トリプルノックアウトマウスが生まれる可能性は極めて低く、交配を繰り返しているため、遅延しています。 Cre-LoxPシステムを用いて、軟骨特異的なトリプルノックアウトマウスも作成していますが(Col2-Cre: Sik1-KO: Sik2-KO: Sik3-KOマウス)、Creマウスの交配が重なると、さらに確率が低くなり、時間を要するため、遅延しています。
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今後の研究の推進方策 |
Sik阻害作用を持つ小分子物質の同定を進めるためには、Sikタンパクを認識する抗体、リン酸化されたSikタン パクを特異的に認識するリン酸化抗体が重要です。Sikファミリータンパク(Sik1、Sik2、Sik3)の中で、ノックアウトマウスが骨・軟骨系組織に明らかな表現型を持つSik3に着目して、解析を進めます。発見以来の歴史が新しいSikには市販品の良い抗体がなく、リン酸化抗体に関しては最近、ようやくSik3のリン酸化抗体の市販が始まりました。良好なSik3抗体、良好なリン酸化Sik3抗体を見つけだし、スクリーニングの効率を高めることを目標に、検証を進めて行きます。 良好な抗体が得られれば、マウス新生児の肋軟骨から採取した初代培養軟骨細胞をPTHrPで処理し、PTHrPによるSik3 タンパクのリン酸化を抑制する物質のスクリーニングを推進して行きます。
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次年度使用額が生じた理由 |
前記のように、研究の遅延が生じ、研究計画が完結していないため。 引き続き、動物実験、細胞実験、薬理学実験を行う。
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