研究課題/領域番号 |
20K08880
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
堀口 健太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (50436408)
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研究分担者 |
田中 知明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50447299)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 下垂体腺腫 / 遺伝子型―表現型 連関 / プロテオミクス / マルチオミクス |
研究実績の概要 |
昨年度に行なった下垂体腺腫の検体を用いたnon-target proteomicsおよびRNAseqとの同時解析によるomics dataから下垂体腺腫全体の特徴としてRNAseqの解析結果ではSF1, T-Pit,Pit1の3つのlineageに分かれることが確認でき,タンパクレベルでも3つのlineageごとにタンパク発現のパターンが大きく異なることが確認できた。その結果から,臨床所見との関係性において,硬い腺腫は柔らかい腺腫より腫瘍が大きい傾向があること,柔らかい腺腫の場合はアポトーシスの誘導機構が関わり、腫瘍の柔らかい性質に繋がる可能性があること,浸潤が強いknospGr4の下垂体腺腫はmRNAとタンパク質の発現パターンが通常の腺腫と異なり,浸潤能に関連する因子が同定された。現在,臨床所見との関係性において,腺腫の硬度,浸潤性,増殖性について更に詳細な解析を行なっている.しかしながら,下垂体の分化過程で発現が亢進する遺伝子群の中にある種々の下垂体腺腫を形成する因子の推定を行うにあたり,腫瘍組織全体を対象とした「bulk検体」を用いた上記のMulti-omics data解析には限界があることもわかった. 本年度はSingle cell解析の技術を用いて非機能性下垂体腺腫例とGH産生下垂体腺腫例に対してシングルセル解析を行なった.腫瘍の硬さにより腫瘍細胞を構成する細胞種の割合が大きく異なっている点が見出された.また,腫瘍細胞以外に大多数を免疫細胞が占めている点もわかり,腫瘍を取り巻く微小環境・細胞間相互作用解析も必要なことが判明した.現在,引き続き解析を行っており,全体としては概ね予定通りに進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下垂体腺腫の組織的多様性と外科手術に影響する多彩な腫瘍特性を明確にするために行なった今までのMulti-omics dataの解析は予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
下垂体腺腫の組織的多様性と外科手術に影響する多彩な腫瘍特性を明確にするため,今までのomics dataの解析に加えて,下垂体腺腫のシングルセル解析も併せて、腫瘍細胞の新たなクラスター分類と多種多様な構成細胞の相互作用を明らかにする。Multi- Omics(RNAseq + Proteomics)とconsensus clusteringの手法を用いた臨床情報と統合した分子生物学的な新規分類では,下垂体の分化に関連する転写因子群や固有のシグナル経路の存在が示された。 今後はシングルセル解析の技術も用いて腫瘍組織を構成する細胞割合と組織間の相違・比較解析,腫瘍細胞そのものに着目し,分子病態・腫瘍 特性解析及び腫瘍を取り巻く微小環境・細胞間相互作用解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度は、Single cell解析をできるだけ多く実施する予定である。非常に高額なSingle cell 用調整試薬等を購入する予定である。
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