研究実績の概要 |
グルコーススパイクとインスリン抵抗性の2因子を分離し,各因子および両因子が内皮機能に及ぼす影響を検討した.また, Nrf2活性化薬のCDDO-Meが血管保護効果を有するかを検討した.8週齢の雄性Wistarラットを食餌(コントロール食, CD; ウェスタン食, WTD)とグルコーススパイクの有無により以下の4群に分けた:1) CD-GS(-), 2) CD-GS(+), 3) WTD-GS(-), 4) WTD-GS(+).21週齢で胸部大動脈を摘出し,NO依存性血管弛緩反応を指標に血管内皮機能を評価し,同時にreal-time PCRによる遺伝子発現解析およびDHE染色による活性酸素種産生の評価を行った.さらに各群をVehicle (sesame oil)とCDDO-Me投与群に分け同様の実験を行った. 1)WTD-GS(+)群のみ高グルコース条件下(20 mM)で内皮機能の低下を認めた.この内皮障害はNOX2阻害薬,ミトコンドリア標的抗酸化剤およびSOD処理により改善した.2)内皮機能は血清遊離脂肪酸濃度と負の相関を認めた.3)胸部大動脈の遺伝子発現解析では,WTD-GS(+)群のみNOX2遺伝子の発現亢進およびSOD2遺伝子の発現の低下を認め,それに一致してDHE染色で評価した活性酸素種産生の亢進を認めた.4)CDDO-Meの前投与によりWTD-GS(+)群の高グルコース条件下の内皮障害は改善した. グルコーススパイクはインスリン抵抗性と相乗的に内皮機能を障害した.この内皮障害は反復性グルコーススパイクと遊離脂肪酸により誘発されたレドックス酵素発現の不均衡化を背景に,高グルコース負荷時のミトコンドリア由来活性酸素種の産生が増加することに起因すると考えられた.CDDO-Me投与はこのレドックス酵素発現の不均衡化を是正し,グルコーススパイクによる内皮機能障害を予防した.
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