研究課題/領域番号 |
20K08891
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
木村 俊秀 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (60404373)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インスリン / 膵B細胞 / シグナル伝達 / プロテオーム / タンパク質 / 低分子量Gタンパク質 / Rab27a |
研究実績の概要 |
本研究ではARNOに着目し、その新たな結合候補タンパク質との結合特性や役割を解析することでエンドサイトーシスの開始シグナルの解明を目指す。エンドサイトーシスは、インスリン分泌の量とタイミングを決めるために必須であり、その破綻は2型糖尿病の新たな原因となりうる。しかし、これまでの研究ではインスリンを放出するまでの過程を扱い、その後のステップを扱った研究は皆無である。本研究は、申請者が同定したシグナルを解析することで、開口放出後のエンドサイトーシスシグナルの解明を行う。 本年度は、同定したARNO結合タンパク質がARNOの細胞内動態に及ぼす影響を検討した。ARNOの細胞内動態はリン脂質によって制御され、同定したARNO結合タンパク質のノックダウンはリン脂質の生成を抑制した。また、同定したタンパク質と相互作用するリン脂質変換酵素を同定し、この酵素がARNOの細胞内動態を制御することを見出した。 以上の結果より、同定したARNO結合タンパク質がリン脂質の生成を介してARNOの細胞内動態を制御することが明らかになった。本研究成果は、次年度以降に行うARNO結合タンパク質の活性制御機構を理解する上で極めて重要であると共に、GDP型Gタンパク質によるシグナリングという意味からも基礎生物学上重要な知見である。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請研究では、ARNOとその結合候補タンパク質が、グルコースによるエンドサイトーシスを制御するメカニズムを、以下に従って解明する。 令和2年度:ARNOとその結合候補タンパク質の結合を評価する。 令和3年度:同定したタンパク質がARNOを制御するメカニズムを解析する。 令和4年度:グルコースによるARNO結合候補タンパク質の活性化機構を解明する。 本年度は、同定したARNO結合タンパク質がリン脂質の生成を介してARNOの細胞内動態を制御することを明らかにした。従って、本年度の研究計画は、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、前年度の成果を基盤に、同定したタンパク質をグルコースが活性化する機構を検討する。 同定したタンパク質は、リガンドと結合することで活性化し、細胞内にシグナルを伝達する。そこで、同定したタンパク質がグルコースで活性化される可能性を検討する。 1)同定したタンパク質を発現した細胞にグルコースを添加し、同定したタンパク質の活性化状態を解析する。同定したタンパク質の活性は、下流に位置するタンパク質のリン酸化と細胞内局在変化により評価する。 2)同定したタンパク質のグルコース結合領域とシグナルが既知である受容体の細胞内領域を融合したキメラ受容体を作製する。次に、上記キメラ受容体を発現した細胞にグルコースを添加し、既知受容体の細胞内シグナルを指標に複合体の性状を解析する。
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