研究課題/領域番号 |
20K08892
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
永島 秀一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (30406136)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マイクロRNA / HMG-CoA還元酵素 / スタチン / 肝糖新生 / 糖尿病 / 組織特異的遺伝子欠損 |
研究実績の概要 |
コレステロール合成経路を抑制するHMG-CoA還元酵素(HMGCR)阻害薬スタチンによって、耐糖能悪化のリスクが明らかになっている。このスタチンによる耐糖能障害に対して複数の機序が示されているが、スタチンの各臓器の糖代謝における作用は一様ではなく、さらに報告によって結論が一定していない。我々は、脂質代謝及び糖代謝における中心的な役割をもつ肝臓に注目して、スタチンの糖代謝に関する研究を行っている。これまでに肝細胞特異的HMGCR欠損(L-HMGCRKO)マウスが重度の低血糖を呈することを報告した。未発表データでは、L-HMGCRKOマウス肝臓では糖新生に関わるG6Pase mRNA発現の低下を見出した。加えてコレステロール合成経路の下流に位置するスクアレン合成酵素(SS)の肝細胞特異的欠損マウス(LSSKOマウス)でも、L-HMGCRKOマウスと同様に12週齢の随時血糖が低下しており、糖新生に関わるG6PaseとPEPCKのmRNAはいずれも顕著に低下を認めた。HMGCRあるいはSS抑制と肝糖新生を結びつける可能性のあるものとしてSREBP2、SREBP1、LXRがあるが、HMGCR抑制をするとこれらの転写因子はいずれも肝糖新生を亢進させるため、既知の転写因子以外の機序を探るために、L-HMGCRKOマウス肝臓において、RNA sequence解析を行いmiR-96/182/183クラスターがL-HMGCRKOマウスで8倍程度発現が亢進していることが明らかになった。このクラスターは、糖新生を正に制御しているFOXO1を抑制することが知られている。以上のことからコレステロール合成経路の抑制と糖代謝経路の新たな関連が明らかになりつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に用いる遺伝子改変マウスの産出が母親の喰殺などにより当初の予定より少なかったため。加えて遺伝子改変マウスの親となる雄雌つがいケージ数をふやすそうとするもスペースの確保が困難であった。また最近のCovid-19の影響で動物飼育施設の使用制限も遅延の理由となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究に用いる遺伝子改変マウスの産出が当初の予定より少なく、その原因を究明している。現時点では母親の生育環境におけるなんらかのストレスと考えられ、そのストレスを減らすべく、新規に建立されあ動物実験施設に移動させた。またさらに生育環境を整えるべくシーファードシャックという巣箱をケージ内に入れて対応している。これらのことから喰殺が減少している。加えて、遺伝子改変マウスの親となる雄雌つがいケージ数をふやすため、当大学実験医学センターに申請した。またCovid-19による動物飼育施設使用制限の影響をうけないような培養細胞を用いた実験に重点を置く。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗がやや遅れているために、使用した研究費に残金が生じた。 マウスや細胞を用いた実験を引き続き行い、その成果を発表する学会への参加旅費のために交付金を使用する必要がある。使用計画として交付金のなかでマウス維持費30%、実験試薬購入費65%、旅費5%程度を使用することを考えている。
|