Sodium glucose co-transporter 2(SGLT2)阻害薬は、尿糖排泄を促進し血糖を改善するとともに体重を減少させる糖尿病治療薬である。申請者は、エネルギー恒常性維持の観点から「SGLT2 阻害薬慢性投与時の腎・消化管連関の有無」を検証するために、糖尿病モデルdb/dbマウス、正常血糖モデルdb/mマウスをLuseogliflozin(Luse)群およびControl(Cont)群に群別し2週間介入した。その結果、両モデルにおいてLuse群はCont群に比し十二指腸から下部小腸におけるグルコース輸送担体遺伝子およびインクレチン関連遺伝子の発現が増加し、グルコース吸収およびインクレチン分泌が亢進していた。正常血糖モデルマウスにおいても同様の事象が確認されたことは、血糖変動と独立した臓器連関の存在が示唆され、腎-消化管連関もしくは肝-消化管連関の可能性を示唆した。SGLT2阻害薬投与後の腎臓局所でのエネルギー代謝・交感神経活性の変化を検討したが両群に有意な変化はなかった。次に、SGLT2阻害薬投与後の肝臓におけるエネルギー代謝・交感神経活性の変化を検討したところ、Luse群はCont群に比しglycogen synthase kinaseやglycogen Phosphorylaseの増加により肝グリコーゲン蓄積が有意に減少、糖新生が増加する傾向がみられた。一方で、肝臓局所における交感神経活性に有意な変化はみられなかった。現時点において、確認された「SGLT2阻害薬慢性投与による消化管糖輸送変化」を説明し得る機序については十分には解明できておらず今後も検討を継続する。
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